【リーガ現地コラム】論争を呼んだバルサの「世紀のPK」。浴びせるべきは批判ではなく喝采だ

2016年02月16日 豊福晋

「相手へのリスペクトに欠くものではないか?」との声も。

セルタ戦の82分、バルサが「トリックPK」を決める。キッカーのメッシが右前にボールを蹴り出し、これを後ろから走り込んだスアレスが冷静に流し込んだ。(C)Getty Images

 一瞬、目を疑った。
 
 2月14日のバルセロナ対セルタ戦(リーガ・エスパニョーラ24節)、82分のことだ。バルサのPKの場面、キッカーはリオネル・メッシ。いつも通り簡単に決めて、カンプ・ノウは歓喜に包まれる――。
 
 誰もがそう考えた。
 
 しかし、数秒後の光景はまったく違うものだった。メッシは自らの右斜め前に軽くボールを蹴り出し、後ろから計ったかのようにそこに走り込んだルイス・スアレスが冷静にゴールに流し込む。
 
 まさに「世紀のPK」――。日曜の夜、カンプ・ノウで7万3000人が揺れた。
 
 この種のPKが決まるのは、何も初めてのことではない。1982年12月5日のアヤックス対ヘルモンド戦では、かのヨハン・クライフが同じようなPKを決めている。その時はクライフとイェスパー・オルセンのワンツーだった。
 
 バルサのレジェンドでもあるクライフは現在、癌で闘病中。多くのメディアがこのPKを、「クライフへのオマージュ」だとしている。
 
 この"トリック"はトレーニングで何度も試されていた。本来であれば押し込む役割だったというネイマールは、試合後にこう笑った。
 
「僕が決める予定だったんだけど、あのデブ(スアレス)が先に追いついたんだ(笑)。でも、まったく問題ないよ」
 
 メッシ、スアレス、ネイマール。世界最強のトリデンテは、ピッチ上の連携だけでなく、その外でも関係性は最高のようだ。
 
 一夜明けたスペインでは、メッシと世紀のPKへの賛辞に包まれたが、その傍らでひとつの議論も起きつつある。
 
「このプレーは相手へのリスペクトに欠くものではないか?」
 
 主な批判や疑問は下記のようなものだ。
 
■相手を小馬鹿にしている。
■0−0でも同じことができたのか(PKを蹴る前の時点で3-1。最終結果は6-1でバルサの勝利)。
■真剣勝負の場で自分たちだけが楽しむようなことはやめるべき。
 
 中には、「メッシが蹴る瞬間にスアレスはペナリティーエリアのラインを踏んでいたので、このゴールは無効である」というルール違反を指摘する声も上がった。

次ページ想像を超えたプレーを“リスペクトの欠如”に繋げるべきではない。

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