「プレーを遅らせ過ぎる」バイエルン指揮官からは注文も...不振で“寡黙”になった独代表キミッヒの現状【現地発】

2023年10月08日 中野吉之伴

「あらゆるところに顔を出そうとし過ぎる」

ノイアーが不在のため、腕章を巻いてピッチに立つキミッヒ。(C)Getty images

 デンマークの雄コペンハーゲンとのアウェイ戦を2-1の逆転勝利で終えたバイエルン。チャンピオンズリーグ(CL)グループステージでの無敗記録を36にまで伸ばしている。

 この試合でMVPに選ばれたのがドイツ代表MFヨシュア・キミッヒだった。ドイツ代表での起用法も含めて、ここ最近ドイツメディアから良くも悪くも注目の的になっている。

 最適なポジションはどこなのか?ボランチなのか、アンカーなのか、インサイドハーフなのか、それとも右SBか右WBなのか。

 バイエルンのトーマス・トゥヘル監督は「ヨシュアは戦略家タイプの選手だ。何もかもをやりたいと思うし、原則的に何もかもができる選手でもある。チームに多くのクオリティをもたらしてくれるが、守備的なボランチとしてのDNAはまだ持ちえていないと思う。自由に動くことを好むし、あらゆるところに顔を出そうとし過ぎる」と話をしていたことがある。

 キミッヒ本人は常日頃から「僕はボランチの選手」と公言しているが、ドイツメディアによると、トゥヘルは8月の段階でキミッヒ本人との個別の話し合いの場で、「プレーを遅らせ過ぎる点」を指摘したという。

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 確かに昨シーズンはバイエルンでもドイツ代表でも、チームとしてうまく機能していない時期が長くあった。思うようなプレーができないと、選手は何とかしようと普段以上のプレーをしようとすることがある。

 以前であればシンプルにパスを出すところで強引にもう一人をかわしたり、つなぐパスだけではなく無理にスルーパスを狙ったりしだす。自分がやらなければという責任感が強すぎて、自分で試合を決定づけようとしてしまうとプレー判断は乱れがちになる。難しいものだ。

 キミッヒは自他ともに認める負けず嫌いだ。それはこだわりを持って取り組んでいることの裏返しでもある。だからどんな勝負でも本気だ。ミュンヘン伝統の祭りオクトーバーフェストでバイエルンの面々が切り株に釘を打つというゲームをしていた。トンカチを片手で上から降り下ろして、5センチの釘を何回で埋めることができるかを競う。キミッヒチームのリュカ・エルナンデズ(現パリ・サンジェルマン)が打ち下ろすたびに大きな声援をあげてサポートし、勝った時には抱き合って喜んでいた。

 1リットルジョッキを片手で持ち続ける対戦でもキミッヒは戦う男だった。対戦するキングレー・コマンが我慢に我慢を重ねながらもついに腕を下ろしても、キミッヒはそのまま止めない。勝負に勝ってもそこから自分との戦いをする。
 

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