小林悠は太田宏介の引退に何を思ったのか。盟友にかけた「俺はもう少し頑張る」に込めた覚悟【川崎】

2023年10月04日 本田健介(サッカーダイジェスト)

「宏介は本当に大きな存在だった」

蔚山戦は出番がなかった小林。それでもチームの勝利を喜ぶ姿があった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[ACLグループステージ2節]川崎1-0蔚山現代/10月3日/等々力陸上競技場

 ACLのグループステージ第2戦、ホームに蔚山現代(韓国)を迎えた川崎は、89分の橘田健人の劇的な決勝弾で2連勝を飾った。

 0-0でゲームが進むなか、最後まで背番号11に声がかかることはなかった。それでも試合後には誰よりもチームメイトを労い、喜ぶ姿を見せるのが、クラブ在籍14年目の小林悠という男なのだろう。

 この日の試合前、麻布大附渕野辺高(現・麻布大附高)の同級生であり、小さい頃からの盟友の太田宏介(町田)の今季限りでの引退が発表されていた。

「小学生の頃から選抜などでも一緒で、ライバルでしたし、宏介の会見はユーチューブで見ていたんですが、『悠がすごく上手くて敵わないと思った』みたいなことを言っていましたが、高校の時は真逆というか、僕のほうが試合に出ていなかったですし、宏介を追い抜け追い越せではないですが、そういう気持ちでずっとやっていました。

 高卒で宏介が(横浜FCで)プロになって、先を越されて(小林は拓殖大を卒業後に川崎へ)めちゃくちゃ悔しかったですし、宏介の存在は、やっぱり僕のなかですごく大きかったですね。常に目標で、先に行かれているなという感じがして、うん...、やっぱり宏介の存在は大きかったです。

 どこにいっても愛されているし、それは本当に宏介の人柄があってこそ。底抜けに明るくて、どこにいっても馴染めたのはあの性格があってこそですよね」

【厳選ショット】キャプテン橘田健人が強烈ミドルで等々力劇場を巻き起こす!宿敵を撃破し2連勝!|ACL GS第2節 川崎1-0蔚山
 
 引退の話は以前から聞いていたのだという。

「宏介は会見でも言っていましたが、何年も前からそういう考えを持っていたと言っていましたし、昨年の年末に同級生で集まった時もそういう話をしていました。

 なんだろう...そうですね…やっぱりお疲れ様という気持ちしかないですよ。でも宏介はサッカーで何かをやり残して引退するわけでなく、次のチャレンジと言いますか前向きな辞め方だったので、そこはすごく嬉しかったです。サッカーを嫌いになって辞めたというわけではないので宏介らしいなと。

 それに36歳までやって、高卒で18年ですよ。もう十分すぎるほどのキャリアですよ」

 同じ36歳。小林は「俺はもう少し頑張るよ」と伝えたという。

 最近は出場機会が限られるが、決して周りのせいにせず、自らにベクトルを向ける男である。

「できないって、言いたくない自分がいる。そことの葛藤はありますが、まだまだ身体は動くので。なんなら宏介より俺のほうが身体はボロボロなんですけどね(笑)。

 でもやれるところまで、足掻いてやり続けますよ。まずは練習でのアピールからです」

 そう言ってスタジアムを後にした。盟友の想いも背に乗せながら、魂のストライカーはグラウンドで戦う覚悟だ。
 
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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