「試合中に驚いた」オランダNECの佐野航大が熱狂ダービーで体感した“リアルな違い”「日本より肌で感じています」【現地発】

2023年10月03日 中田徹

「もうちょっと日本で英語をやっておけばよかった」と苦笑い

NECで同僚の小川(左)と並んで笑みを浮かべる佐野(右)。オランダで充実した日々を送っている。(C)Getty Images

 2週間前のPSV戦、NECは敵地で0-4と完敗を喫したものの、59分から出場した佐野航大は終了間際に鮮やかなドリブルシュートをゴール右隅に決めた。残念ながらこのゴールはVARのオフサイド判定によって幻のゴールとなってしまったが、「デビュー戦で爪痕を残したかった。インパクトを残せたと思います」と、佐野はオランダでのプレーに手応えを掴んだ。

 10月1日のNEC対フィテッセ戦は1-1のタイスコアで迎えた59分、佐野は左ウインガーとしてピッチに投入された。物怖じすることなく果敢にアクションを起こす佐野に対し、フィテッセは二重のマークで抑えにかかる。69分には浮き球を巧みにトラップしてから加速し、一枚マークを剥がして前進したが故意のファウルに遭った。

 終盤80分には小川航基がNECのCFを務めた。83分にふたりが「こういう状況になったら、こういうクロスを入れますから、ここに走ってきてください」(佐野)、「動き出しをしっかりするから、少しタイミングをズラしてからクロスを上げてくれ」(小川)とプレーを確認し合っていた。その2分後、左ハーフスペースを突いてゴールライン際までえぐった佐野が、小川の姿を確認してからクロスを入れるも、目の前の敵に当たってしまい、CKになった。

「低く速いクロスを、敵の股の間を通すイメージでした。航基くんにアシストしたかった」

 NECは89分とアディショナルタイムに失点し、1-3でヘルダーラント・ダービーを落とした。それまで熱く応援してくれていたサポーターは怒りに震え、「恥かしくてたまらないぞ」と合唱し続けた。

 その過激な反応に「(ピッチと観客席が)近いからこそ、試合中に自分が驚いたことのひとつでした。勝ったり得点したりすれば評価される世界ですし、負ければそれだけ落とされる世界。そのことを日本より肌で感じています」と佐野は熱狂のダービーを振り返った。
 
 パスの丁寧さなど、日本のほうが優っている部分はある。しかし、敵陣ゴール前での質の高さや強引さ、局面でのプレー強度の高さは、日本とは比べものにならない。そのなかで、自身の武器のひとつであるドリブルを咎められることなく、佐野はチャレンジしている。

「ボランチとしてプレーするときはパスですけれど、(ウインガーとしては)ドリブルも自分の武器のひとつ。これからもっとドリブルを伸ばすという面でも、高いレベルでやれていることに幸せを感じています」

 オランダに来て1か月半。「もうちょっと日本で英語をやっておけばよかった」と苦笑いするが、思ったよりコミュニケーションが取れているなと感じることもある。

「日本を出て欧州に来たこの1か月半で、サッカーのところでも、サッカー以外のところでも、自分はまだまだだなと感じています。自分の人生のなかで一番刺激的な日常を送れているし、ポジティブにやれていますね」

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