魅力的なサッカーで“リーガ首位”のジローナ。快進撃の理由をスペイン識者が紐解く。「サッカー界のトレンドに名を連ねた」【現地発】

2023年09月30日 エル・パイス紙

「シティとの関係から恩恵を受けているのは事実」

破竹の快進撃を見せるジローナ。(C)Getty Images

 ラ・リーガというスクリーンにおいて、ジローナがいま最も話題の映画となっている。1部で戦うのは4シーズン目の歴史の浅いクラブだ。2017-18シーズンに初昇格を果たし、2年後に降格。2年連続プレーオフでの敗退を繰り返した後、21-22シーズンに1部に返り咲いた。

 その再昇格2年目を迎えるスモールチームが今シーズン、第7節を終えて、18得点に象徴される魅力的で攻撃的なサッカーを展開しながら、首位に立つ快進撃を見せている。

 ジローナは世界中に13あるシティ・フットボール・クラブの一員だが、自治権を持たないサテライトクラブとして運営されているわけではない。シティとの関係から恩恵を受けているのは事実だ。しかし、若手有望株の受け皿として位置づけられているわけでは決してないのだ。

 アレイシ・ガルシア、ヤンヘル・エレーラ、ヤン・コウト、サビオ、ジョン・ソリス、エリク・ガルシアがそのシティとのパイプを活かして獲得した選手たちだ。その中で開幕以来、素晴らしいパフォーマンスを見せているサビオにしても昨シーズンは、PSVのリザーブチームで才能を埋没させていた。シティ経由の選手ではないが、エレガントでクリエイティブなレフティ、ヴィクトル・ツィガンコフもジローナでその才能を開花させている選手の1人だ。

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 その新加入選手の活躍を支えているのは、メディアが騒ぐ騒がない関係なく、若手、ベテラン問わず、ターゲットの実力を見極めるフロントの目であり、それがまた独自のカルチャーを築き上げる礎にもなっている。

 ミチェル監督もその恩恵を受けている1人で、自らのアイデアを発展させるのに最適な環境と、困難な状況でもサポートし続けてくれるクラブに出会うことができた。今から2年ほど前、ジローナがプリメーラRFEF(3部相当)降格圏に沈む中、上層部は迷わず続投を決めた。

 近年、欧州ではクラブが小規模であるにもかかわらず、強者のサッカーを見せるチームが台頭している。プレミアリーグのブライトン、セリエAのサッスオーロやアタランタがその代表格だ。彼らは、市場の行き過ぎた高騰と格差の拡大が進む昨今にあって、コンプレックスを捨て、野心を胸に、見栄えの良いサッカーを展開しながら、常に勝利を目指して戦い続ける。そのサッカー界のトレンドに今、ジローナが堂々と名を連ねている。

 遅かれ早かれ、ジローナは困難に直面するだろう。もっとも1部、2部で様々な嵐を乗り越えてきたクラブにとっては織り込み済みのことで、むしろその苦難を成長の糧に、モデルを確立していった。明確なフィロソフィーと確固たる信念を持ったクラブに投影され、理想の居場所を見つけた監督と選手たちが娯楽性の高いサッカーを展開する。

 ジローナは今見るべき映画である。

文●サンティアゴ・セグロラ(エル・パイス紙)
翻訳●下村正幸

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙のコラム・記事・インタビューを翻訳配信しています。

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