図抜けたスケールの大器は、謙虚に、誠実に。STVV鈴木彩艶を成長させてくれた母親、恩師、ライバルの教え

2023年09月29日 元川悦子

小学生時代から「自立」を意識

STVVの正守護神として奮闘する鈴木。着実にレベルアップしているのは間違いない。(C)STVV

 2002年8月21日生まれの鈴木彩艶(シント=トロイデン。以下、STVV)は、まだ21歳になったばかりだが、飛び級で2017年U-17、19年U-20の両ワールドカップに参戦。21年夏には東京五輪でメンバー入りし、22年のE-1選手権で日本代表デビューを果たすなど、数々のハイレベルな舞台を経験してきた。

 小学生時代から過ごした浦和レッズでも、19年2月に16歳5か月11日というクラブ史上最年少でプロ契約を締結するなど、「将来を嘱望される大器」と位置づけられてきたのだ。

 頭抜けたスケールを誇る鈴木だが、彼の謙虚で誠実なキャラクターというのは広く知られている。その原点を本人に聞いてみると、「母からの教えが最初ですね」と笑顔を見せていた。

「僕は子どもの頃から『自立するように』と母から言われてきました。練習着やユニホームの洗濯も小学校4年生くらいから自分でやるのを習慣づけてきましたし、そんなに苦には感じなかったですね」と、鈴木はキッパリ言う。

「自分のことは自分でやる」という習慣が身についたことで、普段、親や大人がやってくれる何気ないことに感謝の念が高まっていくはず。それが彼の謙虚さにつながっていったのではないだろうか。
 
 次の大きな影響を受けたのが、浦和ジュニアの工藤輝央コーチ。よくマンツーマンでトレーニングしていたという恩師の口癖は、「謙虚になれ」「常に謙虚でいろ」だった。

 その言葉を日々、脳裏に焼きつけていたから、飛び級の連続で代表やクラブでグングン駆け上がっても、誰よりも先に道具を用意したり、片付けたり、人に挨拶したりという人間性ができ上がったと見られる。

 10代の若者だったら、一度や二度、勘違いしてしまってもおかしくないが、鈴木は決してそういうことはなかった。「実るほど首を垂れる稲穂かな」という格言を思い出すような人間性が定着していったのである。

 それを確実なものにしたのが、浦和のトップ昇格後、ポジション争いを繰り広げた先輩・西川周作だろう。

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