「航の姿勢を見てトミ、大地は育ったんじゃないか」STVVから羽ばたいた冨安・遠藤・鎌田の“1期生トリオ”は何が違ったのか~立石敬之CEOに訊く【現地発】

2023年09月07日 中田徹

シント=トロイデンVV、立石敬之CEOインタビュー[前編]

2018年からSTVVに籍を置く立石CEO。今季は8人の日本人選手を抱え、フィンク新体制で上位進出を狙う。写真:中田徹

 DMM.comがシント・トロイデン(STVV)の経営に乗り出したのは2018年のこと。以来、21人の日本人選手がカナリア色のユニホームをまとった。そのなかで出世頭は1期生の冨安健洋(ボローニャ→アーセナル)、遠藤航(シュツットガルト→リバプール)、鎌田大地(フランクフルト→ラツィオ)だ。いずれも日本代表の中心選手である。

 しかし、その後、STVV出身選手で日本代表に定着したのはGKシュミット・ダニエルのみ。この夏、ベルギーに渡ってきたMF伊藤涼太郎、山本理仁は「冨安選手、遠藤選手、鎌田選手のように、ここからしっかりステップアップして日本代表の選手になりたい」と口を揃えたように1期生の存在はずば抜けている。

 初期メンバーのビッグ・スリーと、2期生以降の差は偶然なのか。それとも必然なのか――。そんなことをテーマとして胸に秘めつつ、シーズン開幕直後の8月16日、立石敬之CEOに話を伺った。

――開幕から2連勝し、3戦目のアンデルレヒト戦は負けましたがSTVVは良いサッカーをしました。

「正直に言うと『個の守備』は昨季より弱いんです。だけどボールを握っている時間が長いから危険なシーンは少ない。アンデルレヒト戦の前半、STVVのポゼッション率は70%近くあった。これまでだと『うちがボールを握っているな』と思って見ていても60%くらい。そういう意味ではベルギーのチームらしくないサッカーをしています(笑)。

 フィンク監督を招聘したのはそれが狙いだったのですが、開幕からここまで変わるとは思っていませんでした。ただ、試合の主導権を握っている割には3試合で2得点と少ない。スタンダール戦では押し込んでいたものの、最後に個の力で(FWコイタが)1点取っただけ。チームとして相手を崩し切っていない――と冷静に分析しないといけません」
 
――今季、STVVには8名もの日本人選手が在籍しています。しかし、先発で出場しているのはそのうち3人ほど。FW岡崎慎司選手は開幕戦直後、「STVVはオーナーが日本企業で、選手、スタッフも日本人が多い。これだけ日本人選手がいるのに、開幕戦の先発はGKシュミット、MF伊藤涼太郎の2人だけだった。やっぱり競争はあるんです」と言っていました。

「それは間違いないですね。私は監督に『絶対に日本人を使え』と言ってプレッシャーをかけたことがないから。監督が『日本人選手をあまり使ってないな』と空気を読むこともあるかもしれませんよ。だけど、選手は練習から見せてアピールしていかないといけない。気をつけないといけないのは、試合に出られない間に『俺のことを監督が使ってくれない』と心が折れてしまう選手が過去に何人かいた。共通して言えるのは練習でも淡々とやっていて、頑張っている風に見えない。アピールが下手ということなのだろうけれど…。

 ヨーロッパの人たちはなんだかんだ言っても"頑張ってやっている選手"が好き。チーム練習でみんなとやって、まあまあ上手くやれていても、さっと上がってしまうより、ちょっと居残ってコーチを捕まえて一緒に練習するとか、そういうことで絶対に違ってくる」

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