「家に帰ったら寝るだけ」J3愛媛の石丸清隆監督は、昇格請負人“ソリさん”から何を学んだ?「勝ちたいなら細部まで手を抜かない」

2023年08月13日 元川悦子

対戦相手として山雅に興味

「負けない愛媛」を具現化する石丸監督。J2昇格に向け邁進中だ。(C)EHIMEFC

 ワールドカップ(W杯)経験者のアスルクラロ沼津・中山雅史監督、2022年カタールW杯で日本代表コーチを務めたFC岐阜・上野優作監督、百戦錬磨のベテラン指導者・ヴァンラーレ八戸の石﨑信弘監督ら、多士済々の指揮官参戦で大混戦になっている2023年シーズンのJ3。

 そのなかで、ここまでわずか3敗と「負けない愛媛」を具現化しているのが、愛媛FCの石丸清隆監督だ。

 現役時代には愛媛でも活躍し、引退後は指導者の道に進み、2013~14年は古巣で指揮を執った。2022年に再び愛媛に戻ってきた際、「J3にいる以上、上がらなければ意味がない」と現実路線に舵を切ったが、勝利の重要性を強く感じたのが、松本山雅FCで反町康治監督(現・JFA技術委員長)のもと、トップコーチを務めた2017~19年だったという。

 かつてアルビレックス新潟、湘南ベルマーレ、そして山雅をJ2からJ1に上げた「昇格請負人」。そんな指揮官・反町の参謀になった経緯を、次のように振り返る。

「2013年~14年に愛媛、2015年の途中から2016年にかけて京都サンガで監督をさせてもらって、何度か山雅と対戦しましたけど、サポーターが魅了されているものが、勝ち負けとか、上手い・下手じゃなくて、誰もサボらずサッカーに取り組む姿勢とか、手を抜かない、走り負けないところだと感じていました。

 そういう部分で人々の心を動かすクラブというのは、今までになかった。戦術論やテクニカルな部分に陥りがちだった自分にとっても刺激的だったし、サッカーの原点に気づかせてもらえた気がしました。それと同時に、どうしたらそういうチームを作れるのか疑問に感じていたのも確かです。

 そんな時、アビスパ福岡のつながりで面識のあった山雅の強化担当・南(省吾=現・サンフレッチェ広島強化担当)さんが、『反町さんが監督経験のあるコーチを探している』と僕に声をかけてくれたんです。

 自分は反町さんとは全く面識がなかったけど、ずっと山雅には興味がありましたから、すぐに行く決断をしましたね」
 
 山雅に赴いて生活は一変した。「勝ちたいと思うなら、細部まで手を抜かない」というのをモットーにしていた反町監督は、対戦相手や自チームの分析に徹底的に時間を費やすのが常。当然、コーチングスタッフも寝食を惜しんで映像と向き合うことになった。

「本当に家に帰ったら寝るだけ。睡眠時間も4~5時間というのが日常茶飯事でした。スタッフには分析担当の貝崎(佳祐=現・ベガルタ仙台コーチ)コーチや中川雄二GKコーチ(現・ヴァンフォーレ甲府GKコーチ)たちがいましたけど、本当にずっとクラブハウスにいましたね。家族といるよりも、長い時間をスタッフと過ごしたのは確かです」と石丸監督は苦笑する。

 そうやってスタッフも全身全霊でサッカーと向き合っていたからこそ、選手たちもサボることなく走り続け、120パーセントの力を出せたのだろう。

「選手に『努力しろ』『ハードワークしろ』とよく言いますけど、僕らスタッフもやらないといけないというのは、ソリさんがよく話していたこと。自分たちがやるべきことを1つ1つ、徹底的に突き詰めたからこそ、ああいうチームが生まれた。僕はソリさんのもとで働いて、その重要性をよく理解できた気がしました」と彼はしみじみ言う。

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