「説得力のある言い方、迫力、質」中村俊輔の変わらぬ探求心。実直に、謙虚に、コツコツと。練習では「試合以上のイメージで頭も準備」

2023年08月04日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

言うべきか。言わずにいるべきか

指導者として1年目。横浜FCでコーチを務める俊輔は、時間があればアカデミーの練習にも参加し、貪欲に学ぼうとしている。写真:田中研治(サッカーダイジェスト写真部)

 どこまでも貪欲だ。飽くなき探求心で己を高めようとする。

 現役時代は、欧州のトップリーグのみならず、J2やJ3の試合も観るようにしていた。「いろんな考え方、いろんなヒントがあるから」と、中村俊輔は言う。

 昨季限りでスパイクを脱ぎ、今季から横浜FCのコーチを務める。指導者になっても、カテゴリーを問わずにサッカーと向き合う姿勢に変わりはない。

「今、A級(ライセンス)を取りに行っているけど、コーチングスキルはやっぱり場数だから。個々に『このあいだの試合さ...』とかは、いくらでもできる。そうじゃなくて、グループとしてどう見るか。右サイド、左サイド、前、後ろ。全体を見る」

 マクロの視点で指導にあたる。そのスキルをいかに磨くか。選手であれば、誰かのプレーを見て、参考にしたり、学んだりする。指導者もそれと同じだと、俊輔は考える。

「だから、たまにユースとかジュニアユースを見させてもらっている。他のコーチの指導を見るのは大事。小野信義さん(ユース監督)がいるけど、すごく勉強になる。その他のコーチの方も全部勉強になる。

 週1ぐらいで、残れる日は残って、(アカデミーで)たまに教えさせてもらったり、見たり、混ざったり、コーチたちと話をさせてもらったり。育成だから(トップとは)違うけど、すごく勉強になる」
【動画】左足一閃! 俊輔がぶち込んだ圧巻ゴラッソ
 また、意識しているのが、選手たちにかける「声」だという。

「今って、時間を短くした練習のなかで、テンポだったり、インテンシティが高い。そこでコーチも勢いに乗っていかないと。あおりじゃないけど。俺はそういうのが得意じゃないかもしれないけど、やっていったほうがいいのかなって。難しいね」

 どのタイミングで、何を、どう言うべきか。あるいは何も言わずにいるか。それは常に考えている。

「言っちゃっていいのかな、言わないほうがいいのかなって。本当は伝えたいけど、俺が言うよりも、自分で気づかせたほうがいいのかな、とか。

 言葉のフレーズも難しい。あんまり言いすぎるとうるさいなってなるし、でもうるさくてもいいんじゃないかなっていう時もあるだろうし。そこで、説得力のある言い方、迫力、質。そういうのが大事だと思う。

 同じ練習でも、コーチが違えば、成果が変わるかもしれない。だから、試合以上のイメージで、頭も準備している」

 選手たちのモチベーションをいかに高めて、トレーニングに取り組ませるかも重視している。「ガミガミと言うだけじゃダメだし、褒めたりもするし。良いプレーってこういうのだよ、っていう持っていき方というか」。その手段が、俊輔は「まだ分からない」と正直に明かす。

 だからこそ、いろんな指導の現場を「いっぱい見てみたい」と意欲満々だ。指導者として1年目、"期待のルーキー"は実直に、謙虚に、コツコツと歩みを進めている。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

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