【マドリー番記者の視点】早計に過ぎる指揮官交代。ジダン新監督には茨の道が待っている

2016年01月08日 パブロ・ポロ

十分な準備期間を与えたうえでバトンを渡すべきだった。

指導経験の乏しさを懸念される一方で、圧倒的なカリスマ性に期待する声も。非凡な求心力を発揮し、ジダンは一枚岩のチームを構築できるか。(C)Getty Images

 半年ほど前の話だ。カルロ・アンチェロッティ監督を解任したレアル・マドリー首脳の判断は間違っているという記事を書き、こんな文で結んだ。

「フロレンティーノ・ペレス会長は来年の今頃、記者会見を開き、こう口にする。『今こそ監督を代えるタイミングなのです』と――」

 ラファエル・ベニテスは遅かれ早かれ解任される。昨夏にベニテスがマドリーの監督に就任した直後から私はそう考えていた。しかし、ひとつだけ見誤った点がある。更迭のタイミングだ。彼は1シーズンどころか、7か月余りしかもたなかった。

 年明け早々、またしてもペレス会長がやらかしてくれたと、私はそう感じた。ベニテスの解任は明らかに早すぎる決断だからだ。私はベニテス擁護派ではないが、結果を冷静に見極める必要はある。リーガ・エスパニョーラは現在3位ながら、暫定首位のアトレティコ・マドリーとの勝点差はわずか4ポイント。チャンピオンズ・リーグではベスト16に残っている。

 ハメス・ロドリゲスやイスコら実力者との軋轢が進退に影響したのは確かだろう。しかし、ベニテスは少なくとも数字は残している。「監督は選手との関係やそのマネジメントにおいても優れていなければならない」というのなら、なぜ昨夏にアンチェロッティを解任したのか。選手との関係を築く術において、彼は世界で最も優れた指揮官である。

 ペレスはカスティージャ(Bチーム)を率いていたジネディーヌ・ジダンを後任に選んだ。言うまでもなくジダンは、サポーターから絶大な人気を誇る。それを上回るのはラウール・ゴンサレスくらいだろう。ジダンをベンチに置けば、ベニテス体制下で不満を鬱積させたサポーターの批判を、一時的には抑えられる。しかし、それは短期的な対処法でしかない。結局のところペレスは、保身に走ったのである。

「トップレベルでの監督経験がない」という、多くの人が抱いている疑念については、私はまったく心配していない。才能さえあれば、1部での指導経験がなくとも結果は出せる。2008年夏にバルセロナBからトップチームの指揮官に昇格したジョゼップ・グアルディオラのケースを思い出してほしい。

 もっとも、ジダンにその才能があるかは未知数だ。将来的にマドリーを指揮するのは既定路線だったとはいえ、少なくとも十分な準備期間を与えたうえでバトンを渡すべきだったのは間違いない。シーズン途中のこのタイミングで任命されても、非常に困難な仕事が待ち受けているだけだ。

 そうしたなかでジダンは、マドリーにどんな変化をもたらすのだろうか。

次ページジダンを解任する時はペレスがクラブを去る時だ。

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