【高校選手権】一発勝負の波に吞み込まれた大津。選手権史に残る激闘の舞台裏

2016年01月08日 平野貴也

参入戦のダメージは大きく足も止まったが、それでも観衆を沸かせた迫力の攻撃。

最前線で攻撃の起点となった一美は、安定したポストワークで存在感を放った。来季は野田とともにG大阪に加入する。写真:徳原隆元

 わずか1試合で敗れ去るには、惜しいチームだった。優勝候補の一角に挙げられながら、強豪・前橋育英といきなり激突という、一発勝負ならではの超豪華カードに呑み込まれた、大津だ。最後方に主将のDF野田裕喜、最前線に大型FW一美和成と、ともにG大阪に入団が内定している主力がゴール前で存在感を発揮する見応えのあるチームだった。
 
 試合開始わずか3分、ロングフィードのセカンドボールを拾って右へ展開すると、クロスを一美が頭で合わせ、迫力のある攻撃で会場を沸かせた。本来の持ち味であるパスの組み立てからサイドアタックを仕掛ける部分は、前橋育英が徹底的にケアしたうえ、鋭く背後を使って来たために機能しなかった。
 
 平岡和徳総監督は「やっと(選手が)揃ったのが現実。プレミアリーグ参入戦の静岡学園戦(12月13日)で思いのほかダメージが多く、10日ほど休ませた選手が3、4人いた。今日も前半の終わりに足が止まってしまった。コンパクトな距離を作れればと思ったが、難しかったので、後半は戦法を変えた。もう少しサイドを機能させたかった。消し合いか、打ち合いかと思っていたが、特に両サイドのところは随分と研究されていた」と満足できる状況ではなかったことを明かした。それでも、前橋育英にリードされては追いつくという苦しい展開のなかで、ダイナミックな攻撃を披露した。
 
 前半は18分にミドルシュートのこぼれ球を押し込まれて先制されたが、直後に右MF杉山直宏がPK獲得に成功し、一美が決めて同点。後半は、ビルドアップが難しいと判断し、ハイボールを一美に当てて、セカンドボールからの攻撃を主体とする作戦に変更。しかし、後半4分にカウンターをまともに浴びて再びビハインドとなった。
 
 それでも、ボランチの河原創が巧みにボールをさばき、一美の周囲のスペースを使う吉武莉央を生かしながら反撃。後半15分には、吉武が思い切って放った低いミドルシュートが相手GKの「トンネル」ミスを誘い、再び追いついてみせのだ。
 

次ページ両チームがPK戦に備えてGKを交代した直後にドラマが……。

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