【高校選手権】前回優勝の星稜が4年連続8強へ。守護神・坂口が経験した“負傷、レギュラー落ち”からの完全復活まで

2016年01月04日 松尾祐希

4度の負傷離脱の間に2年生GKも台頭し……。

ベスト8進出の立役者のひとりとなった星稜GKの坂口。一度はポジションを失ったが、大会前に定位置に戻ってきた。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 前回優勝の星稜が後半4分に岡田勇斗が決めた1点を守り切って、4年連続のベスト8入りを決めた。
 
 立ち上がりから攻勢を強めた星稜。決定機を迎えながらもしかし、ネットを揺らすまでには至らない。駒場スタジアムには嫌な空気が流れたが、守備陣が身体を張った守りで相手に得点を許さなかった。とりわけ、CBの岡田、東方智紀と守護神の副主将・坂口璃久の活躍ぶりは特筆すべきモノ。
 
 河崎護監督も「相手もラスト20分くらいになって怒濤の攻撃を仕掛けてきた。でも、うちのCBとGKがハイボール処理を頑張ってくれたと思うし、その3人が今日の殊勲者かなと思います」と賛辞を惜しまなかった。
 
 再三ファインセーブを見せた坂口は、「1対1では相手が正面に打ってくるように、うまく間合いを詰められたのかなと思います。結構1対1には自信を持っているので」と本人が話すように、前半39分には井村早良との1対1を抜群の飛び出しでブロック。後半も安定したパフォーマンスで、チームを完封勝利に導いた。
 
 もともと正GKを努めていた坂口。昨年の選手権では優勝に大きく貢献し、優秀選手にも選ばれた実力者である。しかし、春先から左肩の亜脱臼に見舞われるなど4度の負傷離脱を経験。コンディションが整わずに苦しい時期を過ごすと、2年生の高橋謙太郎が台頭。坂口は10月に完全復帰したが、ベンチに甘んじる日々が続いた。
 
 では何故、指揮官が本大会から坂口を正守護神に据えたのか。答えはいたってシンプル。「やっぱり、うちのCBには高さがなかったですし、相手の高さに対応するためには坂口しかいないと思った」(河崎監督)からである。
 
 今年の星稜DF陣は高さという武器を有しておらず、岡田は176センチ、東方は173センチとふたりとも身長は180センチに満たない。ハイボールを得意とする182センチの坂口であれば、全国レベルの空中戦に十分に対応ができる。
 
 実際に後半20分以降に迎えた相手の攻勢も、「今は身体が切れているし、自信も付けてきている。あそこにボールが行くと安心して見ていられる」(河崎監督)と、自らの武器でシャットアウト。見事に監督の期待へと応えてみせた。
 
 ただ、高さがあるからといって簡単に試合に出られるほど甘くはない。彼の日頃の積み重ねが根底にある。
 
「3年生の意地だと思う。来年がないという心の強さが出たのかなと思う」
 主将の阿部雅志がそう話すように、守護神自らの力でどん底から這い上がったのだ。
 
「去年は当たり前に出られていたのですが、今年は試合に出られる喜びを感じている」
 
 心身ともに充実する守護神の存在は、連覇を目指す星稜にとって不可欠なキーマンといっても過言ではないだろう。

【選手権PHOTOハイライト】浦和駒場/3回戦 星稜×中京大中京|各務原×明徳義塾
 
取材・文:松尾祐希(サッカーライター)
 
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