これぞ川崎の山田新。馬力とスピードが生きた湘南戦のゴールの裏にあった弛まぬ努力

2023年06月19日 本田健介(サッカーダイジェスト)

一度、体勢が崩れかけるも

ゴール後に雄叫びを上げた山田。これまでの悔しさが詰まっていた。写真:滝川敏之

[ルヴァン杯・第6節] 湘南2-3川崎/6月18日/レモンガススタジアム平塚

 Bグループの最下位でルヴァンカップのグループステージ最終戦を迎えた川崎にとって、勝ち抜けには勝利が絶対条件。加えて他会場の結果も関係するなか(各グループの1位〈5チーム〉と各グループの2位のうち成績上位3チームの計8チームが勝抜け)、湘南戦では59分までに大橋祐紀に2ゴールを奪われ、苦境に立たされた。

 前半から思うような試合展開をできないなか、奮闘したのは途中交代でピッチ立った3人だ。73にはMF瀬古樹、88にはFW山田新、90+4分にはFW遠野大弥が連続でネットを揺らし、大逆転を演じてみせたのだ。

 勝点8で同グループの浦和、清水と並んだが、レギュレーションで3位となり、グループステージ敗退が決定。それでも結果を残した3人のパフォーマンスは称えられるべきだろう。

 特に同点弾となった山田のゴールは彼の真骨頂が詰まった素晴らしいものだった。

 88分、中盤の低い位置でこちらも途中出場だったMF小塚和季が巧みなターンで前を向くと、山田は裏へ走り出してボールを呼び込む。DFと並走しながら小塚からの縦へのロングボールを受けると、一度は体勢を崩したかに見えたが、グッと堪えながら、相手を引きずるように前進。エリア内に入ると右足を振り抜き、豪快にニアサイドを射抜いてみせた。
 
 もっとも、よく大勢を持ち直したかに見えたが、本人の印象は異なるようだ。頼もしい言葉が返ってくる。

「実際に(体勢は)崩れかけましたが、自分的には崩れた印象はなかったんです。自分の能力があれば前に行けると。ボールさえ前に行けば、(相手の)前に入れると思ったので、そこは自分の特長なので、信じてやることができました。

 できれば崩れないほうが良いですが、あれくらいは許容範囲。体勢の悪いところでも馬力を出せるのは自分のストロングなので」

 アカデミー育ちで、桐蔭横浜大を経て、今季ルーキーイヤーを戦っているスピードと力強さが武器のストライカーは、リーグ2節・鹿島戦の試合終了間際に逆転につながるプロ初ゴールを奪ったが、その後はサイドでの起用もあり、なかなか結果を残せずに苦しんだ。それでも改めて湘南戦で"努力は裏切らない"ことを実感したという。

「(シュートも)キーパーを少し見て、(ニアが)開いていたので。キーパーとの1対1の練習をメンバーに入れない時も続けてきたので、その成果かなと思います。

 正直、苦しい日々もありましたし、得点も取れてなかったですが、不貞ることはなかったです。今日決められたのは、やり続けてきたからこそ。やり続けなくては今日のゴールはなかったと思います。上手くいかない時でも、やり続けることが大事だと改めて思いました」

 経験豊富な小林悠こそ負傷中だが、レアンドロ・ダミアン、アカデミー時代の同期の宮代大聖と、4-3-3システムで、ストライカーの座を争うライバルたちは強力だ。しかし、湘南戦の"これぞ山田新"というゴールは自信となり、成功体験はさらなる成長につながるのではないか。その進化を楽しみにしたい。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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