【川崎インタビュー】3年連続得点王の大久保が語るゴールの矜持。「勝ちたかったら、俺にパスを出せ」

2015年12月25日

「自分が試合に出た時は、一味違ったチームにしてやる、という想いでプレーしている」

年々、相手との駆け引きが洗練されてきた大久保は、「相手の考え方や動き方も、試合中になんとなく分かる」と言う。 写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 史上初となる3年連続得点王の金字塔を打ち立てた大久保嘉人。
高いシュート技術と巧みな動きで、対戦相手に脅威を与え続けた稀代のアタッカーが、随所にゴールハンターとしての矜持をにじませつつ、今季を振り返った。

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――タイトなマークに遭いながらも、ハイレベルな駆け引きを制して、今季は23ゴールを決めました。
 
「『そこには走らないよ』と見せかけながら、裏を突いてゴールするのは、やっぱり快感というか最高の喜びです。だからこそ、味方のパスを信じて何度も動き直し、相手の予測と違う場所に飛び込める」
 
――サッカーダイジェストが実施した「現役J1リーガー90人が選ぶ、2015年のベストプレーヤー」で、大久保選手が断トツのMVPにも輝いています。
 
 ありがとうございます! 現役選手に選ばれたのは素直に嬉しいです。
 
――J1最多得点記録を争う広島の佐藤寿人選手は、「嘉人がどんな選手か誰もが知るなかで結果を出し続けているのが凄い」と語っています。
 
 去年から、相手がすごく研究しているのが分かりました。普通ならマークが付かないような場面でも付いて来て、今季はさらに分析されている印象を受けましたね。
 
――今季のリーグ最終節・仙台戦でも、CBの渡部博文選手と何度も駆け引きをしていましたね。
 
 相手の顔色を窺いながら、こちらが一瞬動いた時に、どれだけ"ビクッ"と反応するかを見ていました。それ自体は単なる1回の駆け引きですが、"ビクッ"という対応を何度もさせると、相手は徐々に疲労が溜まってくる。そうした駆け引きの繰り返しが、ゴールを決めるうえで大事になります。
 
――年々、駆け引きが洗練されてきた印象です。
 
 それは間違いないですね。今は余裕を持って周りを見渡せるし、相手の考え方や動き方も、試合中になんとなく分かる。そのなかで特徴を掴んでしまえば、『こういう動きはできないから逆を突いてやろう』となる。それから、視野の駆け引きも大事なポイント。相手が一度こっちを見て、ボールに目を戻した瞬間に動き出す。ただ上手い選手になると、見ていない振りをして周辺視野で捉えているので、それも考えて動くようにしています。
 
――大久保選手はゴールパターンが多彩で、広島の佐藤選手も「嘉人はアイデアが多い」と称賛しています。
 
 正直、若い頃はゴールパターンなんて意識したこともなかったです。でも今はどこからでも、どんなシュートでも打てるように、常に準備しています。相手が少しでも間合いを開ければ、『打つよ』と牽制するし、実際に打てば決められる自信もある。逆に警戒して寄せて来るなら、裏を突いたり、連係で崩せばいいと思っていますからね。
 
――大久保選手も相手の動きを研究しているのですか?
 
 プレー映像は一切見ません。こういうプレーをするんだ、という変なイメージが残ってしまって、逆にすごくやりにくくなるので。だから試合のなかで見極めて、向こうの出方に応じてプレーしています。
 
――甲府の土屋征夫選手は、「嘉人がいるいないで、チームは大きく変わる」と存在感に言及しています。
 
 俺がいないならいないで、また違ったチームカラーが出るだろうし、それも悪くはないと思います。もちろん自分が試合に出た時は誰よりもゴールを取りたい気持ちが強いし、"一味違ったチームにしてやる"という想いでプレーしますけどね。
 

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