EL出場決定も三笘薫は複雑な表情を浮かべたままで…滲み出る飽くなき向上心と静かな情熱【現地発】

2023年05月28日 田嶋コウスケ

声は小さいままで、笑顔を見せず

1-1ドローのシティ戦も奮戦した三笘。(C)Getty Images

 ブライトンの三笘薫が、複雑な表情を見せた。

 5月24日に行なわれたマンチェスター・シティ戦で、ブライトンは1-1の引き分けで試合を終えた。勝点1を積み上げることに成功し、クラブ史上最高位となる6位の座を確定した。

 この結果、来季の欧州リーグ(EL)出場権を獲得し、スタジアムは歓喜に沸いた。試合後、本拠地アメックス・スタジアムでは欧州リーグのアンセムが流れ、サポーターはクラブ史上初となる"ヨーロッパ参戦"の祝賀ムードに包まれた。三笘を含む選手たちも笑顔で場内を一周し、サポーターの声援に拍手で応えた。

 選手たちが控え室に戻ってきても、お祭り騒ぎは続く。この日はドレッシングルームの様子が英衛星放送スカイスポーツで生中継され、ロベルト・デ・ゼルビ監督の掛け声を合図に、選手たちがダンス。2022年ワールドカップ・カタール大会でイングランド代表も得点時に使用したダンスチューン「Freed From Desire(欲望からの解放)」(1996年)に合わせ、三笘も身体を揺らして欧州リーグ出場を喜んだ。

 そして、試合終了から約50分後──。三笘が取材エリアに現われた。記者陣は喜びの声を期待し、早速、ある記者が「欧州リーグの出場が決まりましたね。おめでとうございます」と声をかけた。三笘は小さな声で「ありがとうございます」と返す。「強豪の多いプレミアで、欧州リーグ出場を勝ち取りましたね」と問われると、26歳のアタッカーは次のように語った。

「すごく良いシーズンを送ったと思います。でもチャンピオンズリーグも狙える位置につけていたので、そこの悔しさもありますけど。欧州リーグを確定できたのは、すごく良かったです。(記者:CLの意識のほうが強かった?)そうですね。チャンスがあったので。そこはもちろん狙ってました」
 
 このあたりで、筆者は「おや?」と思った。三笘の声は小さいままで、笑顔を見せることもない。ひとつの質問に対し、短く答えるその様子は、まるで敗戦後のようだ。CLはプレミアリーグの上位4チームに出場権が与えられるヨーロッパ最高の大会。その下の位置づけであるELには、今季の場合、5~6位の2チームが出場できる。

 なので、もう少し深く突っ込んで聞いてみた。「試合が終わった後、ELのアンセムが場内で流れた。アンセムを聞き、来季に向けて何か思うことはあったか」。三笘は表情を崩さないまま静かに言葉を続けた。

「うーん…ちょっとCLのほうが嬉しいですけど。ELも素晴らしい大会ですし、あの音楽を毎回聞けるというのは、なかなかないことなので。それは楽しみにしてます。(記者:CLは、やはり三笘選手にとって大きな目標だったのか?)もちろん、そうですね。やれるチャンスがありましたし、そこは常に思ってました」

 ここで、なるほど、と思った。EL出場決定に一定の喜びを示しながらも、プレミア4位まで出場できるCL出場権は逃した。それゆえ、三笘は複雑な表情を浮かべていたのだ。三笘は強い気持ちで、欧州最高峰の舞台を目ざしていたのである。

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