先発落ちの“怒り”をパワーにした久保建英。鮮烈パフォーマンスに番記者も驚嘆「凄みを増している」【現地発】

2023年05月24日 ミケル・レカルデ

ファンの脳裏に嫌な予感が走った

古巣バルサ戦で躍動した久保。(C)Getty Images

 レアル・ソシエダがバルセロナにカンプ・ノウで凱歌をあげた。実に32年ぶりの出来事だ。もちろんバルサは欧州のトップクラブだ。その敵地で白星を掴むのは、簡単なことではないが、これほど長い年月の間、不名誉な記録が続いたのは、勝負強さに欠けるソシエダのチーム体質を映し出していた。

 裏を返せば、この鬼門のスタジアムでの勝利は、イマノル・アルグアシル監督が植え付けた競争力が本物であることを示している。それがまた快進撃を支える原動力になっている。

 成功の秘訣を聞かれた指揮官も、「タレント力で上回るところは他にあるが、これが私の望んでいたチームだ。日々一緒に働くには最高のチームだ。我々が探し求めてきたのはコンスタントさだ。勝ち点に結びつかない試合が続くこともあったが、競争力を維持し、こうしてチャンピオンズリーグ(CL)出場権争いに顔を出すことができているのは、コンスタントさに磨きがかかってきていることの証だ」と語っている。
 

 そんなアルグアシル監督の数少ない采配ミスが、ヨーロッパリーグ(EL)ローマ戦のセカンドレグにおけるタケ・クボ(久保建英)の"先発外し"だった。これはシンパ、アンチを問わず一致した意見であり、だからこそCL出場権を争う最大のライバル、ビジャレアルがジェラール・モレーノの土壇場のゴールで勝点3をもぎ取った直後に、バルサ戦のスタメンにタケの名前がないという報道を耳にした時、ファンの脳裏に嫌な予感が走った。

 中2日で開催されるアルメリア戦に向けて温存したとも考えられるが、少なくとも試合前はその決断を疑問視する声のほうが多かった。しかしそれは杞憂に終わった。開始6分に先制し、優位に試合を進めることができたことに加えて、アルグアシル監督の決断を後押ししたのが、他でもない当事者のタケだった。

 出番が回ってきたのは、58分。タケの投入に伴い、アルグアシル監督はシステムを5バックに変更し、前線を自由に動き回ることができる環境を整えた。改めて様々なポジションをこなすタケのポリバレント性が発揮された形だが、負けず嫌いの彼のことだ。スタメンに自分の名前が入っていないことにいい気はしていないはずだ。

 それどころか、不満を隠すことすらしていないような印象も受ける。タケが素晴らしいのは、その怒りのエネルギーを正しい形で処理し、フラストレーションを好パフォーマンスに繋げることができることだ。これは才能の一つと言っていい。

【動画】ドリブルで3人を引き付けて絶妙のタイミングでパス!久保のバルサ戦プレアシスト

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