京都のスリナム代表GKヴァルネル・ハーンの知られざるキャリア。16歳で名門アヤックスに入団も居場所を失い、スウェーデンでは受け入れ難い現実も…

2023年05月21日 鈴木肇

お気に入りのGKは元イタリア代表のブッフォン

今季から京都の加入したハーン。(C) J.LEAGUE

 マイケル・ウッドに続く2人目の外国人GKとして今季から京都サンガに加入したのがヴァルネル・ハーンだ。オランダとベルギーのクラブでキャリアを築き、前所属先のIFKヨーテボリではスウェーデンリーグ屈指の守護神と呼ばれた経験豊富な30歳は、スリナム代表という異色の経歴を持つ。

 ヨーテボリの地元紙『ヨーテボリ・ポステン』のインタビューなどを引用しながら、日本に来るまでの歩みを紹介したい。

 ハーンはスリナム出身の父親とオランダ出身の母親のもと、ロッテルダムで生まれた。子どもの頃はバスケットボールと柔道をやっていたが、友達に誘われてサッカーと出会う。初めてのゲームで空いているポジションがGKしかなかったため、必然的にゴールマウスに立つことになった。ちなみに、お気に入りのGKは元イタリア代表のジャンルイジ・ブッフォンである。
 
 10代前半で頭角を現し始めたハーンは、2008年、16歳でスパルタ・ロッテルダムからアヤックスに加入。世界有数のアカデミーの門戸を叩いたが、競争は熾烈だった。ハーンは当時についてこう振り返っている。

「(アヤックスに加入して)ビッグな存在になれるかもしれないと思ったけど、その道のりはまだまだ遠かった。アヤックスは誰もが知るクラブで、そのアカデミーとなると非常にタフだったよ。充実はしていたけど大変なことも多かった。

 ほかのクラブとの争いだけでなく、チーム内の競争も大変だったんだ。チームメイトは友人でありながら、一方で強大なライバルでもあり敵でもあった。常にポジション争いにさらされていた。一人の若者にとっては厳しい環境だったよ」(ヨーテボリ・ポステン紙)

 アヤックス在籍時にオランダの年代別代表でゴールマウスを守ることもあったが、クラブレベルでは困難な日々が続く。のちにオランダ代表の正守護神として活躍するヤスパー・シレッセンらとのポジション争いは苛烈を極めた。

 結局、本人曰く「単なる実力不足」によって徐々に居場所を失い、トップチームの試合に出場することなく2012年にアヤックスを離れる。その後、ドルトレヒト、フェイエノールト、ズウォーレ、エクセルシオール、ヘーレンフェーン、アンデルレヒト(ベルギー)、ゴーアヘッド・イーグルスと渡り歩く。ドルトレヒト時代にはローマ、ラツィオ、セルティックといったクラブから熱視線を浴びたこともあった。

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