悔しい敗戦も悲観せず。AZ菅原由勢から伝わる溢れるばかりの充実感。欧州カップ戦の準決勝、120%の奮戦は「楽しい90分だった」【現地発】

2023年05月13日 田嶋コウスケ

プレー強度の差、体力の差を肌で感じる

ウェストハム戦で先発フル出場の菅原。強度の高い試合で疲労困憊も「僕自身すごく楽しかった」と振り返る。(C)Getty Images

 1-2の敗戦で試合終了のホイッスルが鳴ると、AZアルクマールの日本代表DF菅原由勢は思わずその場に座り込んでしまった。

 5月11日に敵地で行なわれた欧州カンファレンスリーグ準決勝・第1戦のウェストハム戦。試合はアウェーのAZが42分に先制するも、66分にPKで同点に追いつかれると形勢が逆転した。ホームサポーターの大声援を受けたウェストハムの勢いに押されるように、AZは76分に逆転弾を許し、第1戦を1-2で落とした。

 その悔しさからか──。試合後、AZの選手たちがサポーターの元に挨拶に向かっても、日本代表DFは立ち上がれずにいた。最後はコーチに起き上がらせてもらって腰を上げ、ひとり遅れてサポーターへの挨拶に合流した。

 試合後の取材エリアでは「ショックを受けていたのか」と質問が飛んだが、菅原によると、プレミアリーグ特有の強度の高い試合で疲労困憊だったと言う。日本代表は、4-2-3-1の右SBとして先発フル出場。ウェストハムの速さ、強さに体力を使い、しばらく立てなかった。

「久々に強度の試合をしたというか。もちろんオランダでも、アヤックスやPSVなど強度の高い試合はありますけど、それとはまた違う試合でした。カウンターの怖さも含め、ウェストハムはスピードが違った。

 1回1回のプレーで自分が120%の力を出さないと、止められないような選手しかいなかった。対応にすごく頭を使いましたし、そのための準備もしてきました。(ショックというより)疲れのほうが大きかったです」
 
 チームとしても、ウェストハムとのプレー強度の差、体力の差を肌で感じたという。

「前半に良い形から点を取れたが、後半の進め方を含め、相手のほうが一枚も二枚も上手(うわて)だった。後半終盤を見れば分かるように、僕らが前線にFW1人を残し、残りのほぼ全員で守ってカウンターをしようとしても、そのFWを追い越して前に行く選手がいない。こちらが疲れ切っていても、ウェストハムはまだ走るんでね。強度の違いは、後半のラスト20分ぐらいでかなり感じました」

 それでも、前半はAZが優勢だった。ボールを保持しながら敵陣に押し込み、42分に味方の鮮やかなミドルシュートで先制。右SBの菅原は、大外のタッチライン際でパスを受けたり、偽SBとして中盤の内側レーンに入ってパスコースを増やしたりと、巧みなポジショニングでスムーズなポゼッションに寄与した。

 興味深かったのは、その位置取りだった。大外の位置をキープしてパスをもらう時もあれば、中に入ってボールを受ける時もある。その動きに規則性は見えない。

 三笘薫の所属するブライトンでは、ビルドアップの形が決まっており、日々の練習の中でそれぞれのポジション取りを刷り込ませている。そのためブライトンではSBの位置取りに一定の規則性が見えるが、対するAZの場合は、特定のパターンがあるわけではないという。

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