【岩本輝雄】現実を見て“勝つ”ためのサッカーを徹底。長谷部アビスパは良い意味で不気味な存在だ

2023年04月07日 岩本輝雄

とにかく最終ラインの3バックが安定

就任4年目の長谷部監督。アビスパを着実に成長させている手腕は見事だね。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 恒例の開幕前の順位予想で、僕はアビスパを最下位と予想していた。理由は2つ。「昨季終盤戦の失速が気がかり」「今季は補強が少ない」という点だ。

 いざシーズンが始まってみれば、予想は良い意味で裏切られた。6節を終えて、アビスパは3勝2分1敗、勝点11で5位。開幕戦こそ黒星だったけど、その後は連勝を含めて5戦負けなし。タフな戦いぶりを見せている。

 とにかく最終ラインの3バックが安定している。前節の横浜FC戦ではグローリ、奈良、三國の編成で、彼らは球際で強いし、高さでも簡単に負けない。

 ここに両ウイングバックが加わって5バックっぽくなるけど、これがまた堅いよね。特に右サイドの湯澤。ファイタータイプの選手で、彼の闘争心あふれるプレーは、チーム全体を盛り上げていると思う。

 戦術的には、しっかりと守って、奪ったらロングボールで素早く相手の背後を狙う。シンプルと言えば、シンプル。余計な手数をかけないで、効率良く攻める。

 端的に表現すれば、現実的なサッカーであり、"勝つ"ための戦い方に徹していると思う。昨季は残留争いに巻き込まれた。その経験を踏まえて、今季もJ1の舞台で生き残るために、やるべきことを徹底してやっている。そんな印象を受けるよ。

 勝点を取れるうちに取っておく。そのための最良の方法が、今のサッカーなんじゃないかな。長谷部監督は地元が同じ横浜で、昔からよく知っている。選手時代も、指導者になってからも、クレバーだし、常にいろんなことを考えて、実行していく。
 
 もしかしたら、本当は違うサッカーをやりたいのかもしれない。でも、理想を追い求めるのではなく、現実をしっかりと見つめて、方向性を示し、チームをまとめて、ピッチ上で表現させて、結果を出してみせる。やっぱり賢い監督だよね。

 だからこそ、ここからアビスパがどんな戦い方を見せるか、進化していくのかが楽しみではある。攻撃面で言えば、現状では1トップが孤立気味になる場面が少なくない。そこに2列目やボランチがもっと絡めるようになれば、攻撃の幅は広がるだろうけど、そうなると自慢の守備力に影響が出てくるかもしれない。

 そこのバランスをどう整えるか。あるいは、まったく違う戦略を準備しているのか。長谷部監督のことだから、いろいろと策を練っているはず。それをいつ、どのタイミングで披露するのか。

 堅実に戦いながら、土台を固めて、虎視眈々と上位進出を狙う。言い方はちょっと変かもしれないけど、ここまでを見る限り、今季の長谷部アビスパは不気味な存在になりそうな気がする。もちろん、これも良い意味でね!

【著者プロフィール】
岩本輝雄(いわもと・てるお)/1972年5月2日、50歳。神奈川県横浜市出身。現役時代はフジタ/平塚、京都、川崎、V川崎、仙台、名古屋でプレー。仙台時代に決めた"40メートルFK弾"は今も語り草に。元日本代表10番。引退後は解説者や指導者として活躍。「フットボールトラベラー」の肩書で、欧州CLから地元の高校サッカーまで、ジャンル・カテゴリーを問わずフットボールを研究する日々を過ごす。

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