ミーティングで厳しい言葉「なんだ、今日の練習の雰囲気は。そんなのでいいのか?」徳永涼が貫いたキャプテンシーで、急造チームは一気にまとまった

2023年03月08日 安藤隆人

Jクラブのオファーを断り筑波大に進学

日本高校選抜でも腕章を巻いた徳永。デンチャレ最終戦では2得点に絡み、歴史的勝利に導いた。写真:安藤隆人

 2月21日から3月4日まで開催されたデンソーカップチャレンジ茨城大会において、3年前から参加している日本高校選抜が、関東選抜Bとの最終戦を2-1で制し、大会初勝利を手にした。

 このチームの中心にいたのが、ボランチの徳永涼だ。名門・前橋育英でも攻守の要であり、キャプテンとして精神的支柱でもあった彼は、日本高校選抜においても仲村浩二監督から真っ先にキャプテンに任命されていた。

 Jリーグの複数クラブからの正式オファーを断って筑波大に進学する徳永は、視野の広さと頭の回転の速さを駆使したパス出し、鋭い読みと出足の速さを活かした高いボール奪取を誇る。

 この能力だけでもJクラブのスカウトをはじめ、周りから高い評価を得ているのだが、その存在を絶対的なものにしているのが、キャプテンシーだ。
 
 プレー中と同じで常に練習からチームメイトの表情や行動に目をやり、サッカーに対する意欲や集中力が欠けている行動があれば、鋭く指摘する。

 ピッチ内でも仲間を鼓舞する声や、危険な場所をすぐに察知して声でコントロールしたり、連係ミスや判断のズレがあればすぐに話し合いをしたりと、個々の力をつなぎ合わせてチームを戦う集団にする能力が非常に高い。だからこそ、仲村監督も迷うことなく徳永にチームを託した。

 今大会に臨む前、チームとしての初めての大舞台で、徳永はさっそくその才を発揮していた。2月11日にFUJIFILM SUPER CUP 2023の前座試合として行なわれた、横浜F・マリノスユースとのネクストジェネレーションマッチ。試合前日に徳永は全体ミーティングを開いて、仲間の前で厳しい言葉を放った。

「チームになっていないぞ。なんだ、今日の練習の雰囲気は。そんなのでいいのか?」

 静岡県で行なわれた事前合宿の練習試合などで、レギュラー組とサブ組が少しはっきりし出した時に、レギュラー組の気持ちが緩んでいることに徳永は気がついた。

「僕らは急造チームだからこそ、それぞれが言いたいことを言えなくなる場面が増えると思うんです。何か違うなとか、こうしたほうがいいなと思っていても、それが声に出せなくなると、どんどん意思疎通が難しくなって、チーム全体の雰囲気が悪くなったり、試合でそれが脆さとなって出てしまう。僕がキャプテンを任された以上は、このチームが決してそうならないように、いろんな選手に積極的に話しかけて、言いにくいこともはっきりと言おうと思っていた」
 

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