マドリー下部組織出身FWの「共通点」
アトレティコとのダービーで敗戦の危機を救う同点ゴールを決めたA・ロドリゲス。(C)Getty Images
「El Toro」(雄牛、頑健な男のたとえ)
そのニックネームからして、相手を蹴散らすような迫力がある。交代出場でのファーストタッチだったことから、胆力も申し分ない。
「長身で頑健な体で、(今のチームに)いないタイプのフォワードだ」
マドリーを率いるカルロ・アンチェロッティ監督も、2年前までユースのBチームでウイングだったA・ロドリゲスを、飛び級でトップに帯同させている。今シーズンは、カスティージャ(セカンドチーム)が主戦場だったが、今やその枠にも収まらなくなった。
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A・ロドリゲスは、久々にカスティージャが輩出した規格外のストライカーとして注目されている。
レアル・マドリーの下部組織は、過去に多くのストライカーを生み出している。「ゴールを狩る」という才能を見いだす発掘力にめっぽう優れ、生来的な能力を伸ばす環境を与えられる。それが伝統になっている点、欧州随一と言っても過言ではない。
現役を見回しても、ロベルト・ソルダード(レバンテ)、アルバロ・モラタ(アトレティコ・マドリー)、ロドリゴ(リーズ・ユナイテッド)、ホセ・マリア・カジェホン(グラナダ)、ボルハ・マジョラル(ヘタフェ)、ラウール・デ・トマス(ラージョ・バジェカーノ)など、スペイン代表クラスのストライカーを数多く輩出している。
マドリー下部組織出身FWには、一つの共通点があると言われる。
「虎の目」
それは、どんな状況でも屈しない、狩りをする肉食獣の気概と言えるだろうか。ラウール・ゴンサレス(現在はカスティージャ監督)がまさにその象徴だった。追い込まれたところで、強さを発揮できるのだ。
しかし、一人のストライカーがマドリーで大成するのは、簡単なことではない。事実、下部組織出身FWで純粋にエースとして定着したと言えるのは、ラウールが最後である。クリスティアーノ・ロナウド、カリム・ベンゼマを凌ぐようなストライカーでなければならないのだ。
限られたストライカーだけが、マドリーのストライカーとして栄光に浴することができる。
はたして、A・ロドリゲスは栄えあるストライカーとなれるのか。ポテンシャルは十分だろう。あとは、ゴールを決め続けることだ。
文●小宮良之
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。