現地紙コラムニストが綴る――武藤嘉紀のブンデス挑戦記「武藤を左サイドに据えた新布陣を採用か」

2015年11月26日 ラインハルト・レーベルク

パリ同時多発テロはドイツ・サッカー界にも多大な影響を。

マインツ対ケルンの会場となったラインエネルギーシュタディオン。試合は大きな混乱もなく実施された。 (C) Getty Images

 ドイツ人は自由を強く求めると同時に、高い安全性も求める。パリの同時多発テロ以降、ドイツではスタジアムの「安全」というテーマについてさまざまな場所で盛んにディスカッションが繰り広げられた。
 
 パリはドイツから目と鼻の先にあるといっていい。実際、隣国で起きたテロはこの国にも多大な影響を及ぼした。
 
 テロから約1週間後に行なわれたブンデスリーガ13節では、全会場で厳戒なセキュリティー対策が実施された。機関銃を持った警察官、爆発物探知犬、サポーターたちの中に紛れ込んだ諜報機関の人間……。厳しいセキュリティーチェックにより、スタジアムに入るまでに時間を要し、入場口には長い行列ができた。
 
 また11月17日にハノーファーで開催予定だったドイツ対オランダの親善試合が中止になった。中止に踏み切ったのは、諜報機関がある情報をつかんでいたからだ。テロリストたちがスタジアム、バス停、ハノーファー中央駅に計5つの爆弾を仕掛けようと企てていたのだという。
 
 対岸の火事などではない。テロの脅威はすぐ近くにあり、私たちドイツ人はしばらくの間、不安な気持ちで日々を過ごさねばならないだろう。
 
 多くのクラブの首脳陣や、監督、選手たちはメディアを通じて、スタジアムへ行くことがテロに抗して自分たちの自由を守ると主張した。
 
 裏を返せば、(出かけずに)家にいるのは、ジハディスト(聖戦主義者)たちの思うつぼだということになる。だが、彼らの主張は馬鹿げている。誰もが、自分でリスク管理をする権利を持っているのだ。
 
 11月21日、武藤嘉紀が所属するマインツは敵地でのケルン戦に臨んだ。普段は熱狂的なサポーターたちも、この日ばかりは発煙筒の使用を控えた。
 
 今の状況では、発煙筒や爆竹の爆発音によって、観客がパニックに陥り、大混乱になりかねない。サポーターたちの配慮もあり、試合は滞りなく実施された。

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