青森山田の10番・小湊絆に突きつけられた現実。だがショックの先にあったのは絶望ではなく大きな希望だった

2023年03月07日 安藤隆人

大学トップレベルのCBに片手で吹っ飛ばされる

デンチャレで3戦3発。充実の活躍ぶりだったが、小湊は強烈な危機感を覚えた。写真:安藤隆人

「あのレベルを知ることができたのが、この大会での一番の収穫だと思います」

 日本高校選抜の10番・小湊絆は、デンソーカップチャレンジ茨城大会の最終戦となる7・8位決定戦でチーム初勝利を手にした後に、感想をこう述べた。

 昨年、青森山田では松木玖生から背番号10を託され、名門のエースとしてチームを牽引。日本高校選抜でも「集合した時に『小湊』という段ボールがあって、中を見たら10番だったのは驚いたし、気持ちが昂った」と、エースとしての期待を背負ってプレーした。

 初戦の関東選抜A戦でスタメン出場を果たすも、ノーゴールのまま81分に交代。チームも1-3で敗れた。第2戦の東海選抜戦は卒業式出席のためにチームを離れたが、第3戦のプレーオフ選抜戦ではスタメンでフル出場を果たし、2ゴールを叩き出した。そして7・8位決定戦の関東選抜B戦では、0-1で迎えた48分にMF高足善のパスから左足シュートを突き刺して同点に。その4分後にチームは逆転弾をゲット。歴史的な勝利に小湊は大きく貢献した。
 
 3試合出場で3ゴール。10番にふさわしい活躍で、チームメイトの多久島良紀と共に大会優秀選手にも選出された。

 小湊にとっては充実した大会と思いきや、彼が体感したものは「とてもじゃないけど、今のままじゃ通用しない」という強烈な危機感だった。

「ゴールこそ決めていますが、実感的には大きな差があるんです。ボールを持ったら潰されるし、持ってもなかなか前に運べなかったり、ポストプレーでも力でねじ伏せられることが多かった。ここまで露骨に相手のパワーにねじ伏せられる経験は中学生以来。本当にショックだった」

 大学生を相手に本来やりたかったプレーが全く出せなかった。特に関東選抜A戦が衝撃的で、大学トップレベルのCBである岡哲平(明治大)とマッチアップした時は、片手で吹っ飛ばされた。さらに「狙ったところに飛び込めたと思ったら、実は誘い込まれていて、完璧な形で奪われてしまった」と、相手の術中にまんまとはめられるほど、技術、フィジカル、駆け引きで大きな差を見せつけられた。

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