広島大から“2人目のJリーガー”誕生なるか。ボランチ香取潤は夢のプロ入りを目ざして一歩ずつ着実に歩みを進める

2023年03月05日 安藤隆人

思いもよらないところからの練習会参加の誘い

プレーオフ選抜の一員として攻守に存在感を示した香取(17番)。写真:安藤隆人

 デンソーカップチャレンジ茨城大会。プレーオフで敗退した地域の選手から選ばれたプレーオフ選抜は、グループリーグを2位通過し、東北選抜との3位決定戦でも勝利をして堂々の3位に食い込んだ。

 佐藤健監督、中村憲剛コーチの中央大コンビに率いられ、大躍進を見せたプレーオフ選抜において、個人的に印象に深く残ったのがボランチの香取潤だった。

 香取はチームが唯一敗戦したグループリーグ初戦の東海選抜戦(0-2)こそ出番は来なかったが、第2戦の関東選抜A戦(5-2)から3試合連続でスタメンフル出場。豊富な運動量とボールを奪ってからのテンポの良いパスで攻守の要となった。

 まだ1年生。しかも所属は全国屈指の国立大である広島大サッカー部。香取は広島大の教育学部で先生を目ざす一方で、小さい頃からの夢だったプロサッカー選手の夢も全力で追いかけている。

 中学、高校時代はサンフレッチェ広島の下部組織に所属。右サイドバックが本職だった香取は、高校2年生から高校3年生に上がる3月に左足の中足骨を疲労骨折してしまった。直後にはサニックス国際ユース大会が控えていた。多くの選手たちは3月のフェスティバルで大学スカウトの目に留まって、練習参加や推薦入学の話をもらっていく。香取もそれを狙っていたが、彼が復帰を果たしたのは夏のことだった。
 
「周りがみんな進学先が決まっているのに僕は決まっていなくて…。プレーできていないのでどこも声をかけてもらえない状態に焦っていました」

 8月下旬、思いもよらないところから練習会参加の誘いがあった。それが広島大だった。

「広島大といえば有名国立大ということは知っていました。広島大サッカー部の上泉康樹監督から『国体の実績(全国ベスト8以上の成績で、香取は茨城国体で準優勝を経験)もあるし、評点もクリアをしているから受けてみないか』と言われ、正直驚きましたし、両親は喜んでいましたが、大卒プロを目ざしている僕としては正直迷いました」

 全国屈指の国立大に進学できるチャンスであると同時に、「関東や関西、九州の強豪大学に進んだほうがプロになれる確率が上がる」と思っていた香取は、広島大に進めばその確率が下がってしまうのではないかと懸念した。

 実際、広島大サッカー部からJリーガーになったのは、長い歴史の中で村上一樹(元FC岐阜、現・アユタヤ・ユナイテッド/タイ)の1人のみ。しかもそれは2010年の出来事で、もう13年もの歳月が経とうとしている。
 

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