現地ベテラン記者が香川真司を密着レポート「香川がより活きるのはロイスではなく…」

2015年11月26日 マルクス・バーク

ハンブルク戦の敗北は単なる“偶発的な事故”。

香川がより活きるのは、ロイスではなくムヒタリアン(左)が左ウイングで起用されたとき。バーク記者はそう見ている。(C)Getty Images

 ついにその時が訪れてしまった。11月20日のハンブルク戦(ブンデスリーガ13節)でドルトムントが、今シーズンのブンデスリーガ初黒星(1-3)を喫したのだ。
 
 正確に言えば、バイエルン戦(ブンデスリーガ8節)に続いて2敗目だが、リーグの水準を遥かに超えた戦力値を誇る絶対王者相手の敗戦は度外視していい。

 実際、ハンス・ヨアヒム・ヴァツケCEOはハンブルク戦の3日後に開かれた株主総会で、「現在のブンデスリーガでは2位が現実的で、我々にとって最高の順位」と言っていた。
 
 次節(11月29日)の対戦相手は、降格圏に沈むシュツットガルト。11月24日にアレクサンダー・ツォルニガー監督を解任し、Bチームを率いていたユルゲン・クラムニーを暫定監督として昇格させたばかりで、ドルトムントにとっては与しやすい相手と言えるだろう。
 
 この一戦で注目されるのは、トゥヘル監督がハンブルク戦でパフォーマンスが良くなかった香川を先発起用するかどうかだ。
 
 代表ウイーク明けで疲労が蓄積していたのだろう。左インサイドハーフで先発した香川はいつものキレがなく、左ウイングのマルコ・ロイスとうまく噛み合わなかった。
 
 ロイスが故障明けでコンディションが今ひとつだった影響もあったのだろうが、左ウイングにヘンリク・ムヒタリアンが入った時(ハンブルク戦は右ウイング)のほうが、香川がより活きると私は思う。
 
 事実、香川がムヒタリアンの近くまで動いて相手を引きつけ、右サイドでフリーになったSBのマティアス・ギンターにパスを送るパターンは、多くの試合で機能してきた。ハンブルク戦も基本的なプランは同じだったものの、その攻撃の型は鳴りを潜めた。
 
 敗北の理由として、パリで起きたテロ事件の影響を挙げるメディアも少なくない。ドイツ代表に招集され、試合の開催地パリに遠征したマッツ・フンメルス、イルカイ・ギュンドアン、ギンターの3人は、テロを間近で経験したからである。
 
 正直に言って私は、その影響はほとんどなかったと思う。今回の敗戦は単なる"偶発的な事故"で、シュツットガルト戦ではこれまでと同様の好パフォーマンスを見せてくれると信じている。
 
 ドルトムントの最大の強みは、破壊力抜群の攻撃だ。主将フンメルスが不調のディフェンス陣には一抹の不安を抱えているものの、それほど深刻ではない。
 
 ドルトムントはしばらくの間、ドイツ最強のチームとして君臨するだろう。もちろん、これはバイエルンを除いた話ではあるが。
 
文:マルクス・バーク
翻訳:円賀貴子
 
【著者プロフィール】
Marcus BARK(マルクス・バーク)/地元のドルトムントに太いパイプを持つフリージャーナリストで、ドイツ第一公共放送・ウェブ版のドイツ代表番としても活躍中。国外のリーグも幅広くカバーし、複数のメジャー媒体に寄稿する。1962年7月8日生まれ。
 
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