【2015総括】浦和編|柏木陽介を中心に攻撃のグレードは上がったが、8試合連続失点とシーズン終盤の“バタバタ癖”を払拭できず

2015年11月27日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

守備に不安を抱えたままチャンピオンシップへ。

常に前を向いて仕掛けようとする武藤の姿勢が、浦和にダイナミズムをもたらした。 (C)SOCCER DIGEST

 J1第2ステージ、浦和は5位に終わり、年間1位の座を広島に逆転された。『サッカーダイジェスト』の浦和担当記者が、11月22日で今季最終戦を迎えた2015シーズンを振り返り総括する。
 
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浦和レッズ
年間成績:2位 勝点:72 21勝9分4敗 69得点・40失点
第1ステージ成績:1位 勝点:41 12勝5分0敗 39得点・17失点
第2ステージ成績:4位 勝点:31 9勝4分4敗 30得点・23失点
 
【2015シーズンの出来を点数で表わすと?】
80

 年間総勝点72は、優勝した06年と並んでクラブ史上最多となった。敗戦数4も07年と並んで最少タイ。ゴール数69は04年の70点に次ぐ。記録上、2015年は間違いなく"歴史的"なシーズンだった。

 とりわけ攻撃面は、ペトロヴィッチ監督就任から4年目、最終ラインの攻撃参加もメカニズムに組み込んだ3-4-2-1スタイルが見違えるように有機的に機能。シャドーからボランチにメインポジションを変えた柏木、浦和ユースから昇格2年目にして右ウイングバックのレギュラーを掴んだ関根、そして無名の存在から日本代表へとシンデレラストーリーを駆け抜けた武藤らの活躍により、"どこからでも崩す"という理想をピッチ上で表現していった。

 ただし結果的には、年間順位で広島に上を行かれてしまった。

 第1ステージで無敗優勝という史上初の快挙を達成しただけに、第2ステージの残り4節で年間首位の座を明け渡したという最後の息切れがどうしても目立ってしまうのは否めない。シーズン終盤、公式戦8試合連続失点と守備が安定しなかった。チャンピオンシップに向けて、那須、森脇、岡本とDF陣に怪我人が続出しているのは不安材料だ。

 神戸戦で失点を許した時、GK西川が悔しさを剥き出しにしたシーンは印象的だった。もちろん浦和は守り勝てるようなチームではない。ただし、ラッシュを仕掛ける時、少し相手をいなす時間、相手の心理を読んで徹底して裏を突く時間など、メリハリをつけられるようになりたい。

 どうしても、一本調子になってしまう。マークがフワッと緩み、致命傷を負ってしまう――。それはミシャ体制下の終盤戦で、ずっと繰り返されてきた"悪癖"だ。

 もちろん選手はその点を十分理解している。チャンピオンシップの鍵を握る司令塔の柏木は次のように、自分自身の役割について語っていた。

「勢いがあるサッカーができている。でも、勢いよくいき過ぎてしまうところがある。そこで落ち着かせるのが俺の役目でもある。メリハリを上手く付けていければ」

 メリハリ。浦和がチャンピオンシップを制すキーワードとなりそうだ。
 
【今季のチームMVPは?】
武藤雄樹(FW)

 神戸戦で開始1分にヒールで技ありの先制点を奪い、大勝劇の口火を切った。通算13得点はチームトップ。ボールを持つと、まず仕掛けようと一歩を踏み出す。その"前向き"な姿勢がチーム全体に推進力をもたらした。本人は「浦和のチャンスの数を考えれば、もっと決められたはずだった」と満足していない。それでも今季この男が昨季まで欠けていたダイナミズムをもたらしたのは確かだ。
 
 
文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)
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