【CLポイント解説】バルサ大勝を生んだローマの「腕試し」

2015年11月25日 片野道郎

バルセロナ対ローマ戦の結果&フォーメーション。

 11月24日のチャンピオンズ・リーグ5節、ローマとのリターンマッチに臨んだバルセロナが、本拠地カンプ・ノウで怒涛のゴールラッシュ。91分に1失点したものの、大量6ゴールを叩き出し、ラウンド・オブ16進出を確定させた。
 
■ポイント1
ローマが無謀なハイプレス戦術に出た理由

 
 ベタ引きで自陣深くにブロックを形成して守り倒し、1-1の引き分けをもぎ取ったホームでの1節とは一転。ローマは最終ラインを積極的に押し上げてのハイプレスで、アウェーにもかかわらず勇敢にも正面からバルセロナに戦いを挑んだ。
 
 6-1という大敗をローマにもたらした最大の要因は、どう見ても勝ち目が薄く、リスクが大きいこのゲームプランにある。実際、試合の流れを決定づけた最初の2失点(15分スアレス、18分メッシ)は、いずれも押し上げた最終ラインの裏を突かれて与えたものだった。
 
 この無謀ともいえるガルシア監督の戦術的選択を理解する鍵はおそらく、時差の関係で約3時間前にキックオフされた同じグループEの裏マッチ、BATEボリゾフ対レバークーゼンの結果にある。
 
 開始2分にレバークーゼンのGKレノが正面の何でもないシュートをトンネルしてBATEが先制し、その後はレバークーゼンが一方的に攻め立てながら1-1の引き分け止まりに終わったために、勝点をローマと同じ5までしか伸ばせなかったのだ。
 
 おかげでローマはこの試合に負けても、ホームでの最終戦でBATEを下しさえすれば、たとえレバークーゼンがバルサに勝ったとしても、直接対決の結果で上回るためベスト16への勝ち上がりが可能になる。奇妙な話だが、ローマにとってこのバルサ戦は、実質的な「消化試合」になったというわけだ。
 
 そうだとすれば、引き分け狙いで守り倒す消極的な戦い方を選ぶよりも、先週末のクラシコでR・マドリーを粉砕し、しかもメッシが故障から復帰して意欲満々というバルサ相手に自分たちのサッカーがどこまで通用するか、ある種の「腕試し」をしてみようというのも、選択としては「あり」だろう。たとえその結果が、目を覆うようなものであったとしても……。
 
 
■ポイント2
バルサが裏への走り込みでローマ守備陣を翻弄

 
 立ち上がりから積極的に前に出てハイプレスを仕掛けてきたローマに対し、バルサはたやすくそのプレスをかわしつつ十八番のポゼッションで中盤を支配。そこから前線のネイマール、スアレス、メッシはもちろん、大きく前進したSBのD・アウベスやジョルディまでもが、タイミングをずらしながら次々と最終ラインの裏にオフ・ザ・ボールで走り込んで揺さぶりをかけ、スルーパスを引き出そうと試みる。
 
 これに対してローマの最終ラインは細かい上げ下げの統率が取れておらず、見るからに危なっかしい限り。高い位置まで押し上げてくるバルセロナの両SBをマークするフロレンツィ、I・ファルケの両ウイングまでが最終ラインに吸収されて実質6バックになることもしばしばで、しかも走り込みに付いていくかマークを放してオフサイドにするかの判断も、統一が取れていない。
 
 7分にネイマールが裏に抜け出した場面は間一髪でオフサイドにしたものの、15分には右サイド大外からゴール前へダイアゴナルに走り込んだD・アウベスに裏を取られ、ネイマールの絶妙なスルーパスがそこに送り込まれて万事休す。タイミングを合わせてファーサイドに飛び込んできたスアレスは、D・アウベスの横パスを無人のゴールに押し込むだけでよかった。
 
 そしてそのわずか3分後、今度はネイマール→メッシ→ネイマール→メッシ→スアレス→メッシという前線のトリオによる連続ワンツーで最終ラインを突破され、メッシに復帰後初ゴールを献上。開始20分足らずに決まったこの2点で、試合の流れはすでに決したと言っていいだろう。

次ページピッチ上に存在するチームはバルサだけだった。

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