「練習参加の高校生はだいたい落ち込んで帰っていく。でもアイツは…」。鄭大世が凄いと感心したルーキーは?

2023年02月26日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

プロで成功できないのはむしろ当たり前

プロサッカー選手という職業を17年間も続けた鄭大世。天国と地獄の両方を経験したという。写真:サッカーダイジェスト

 成功するルーキー、失敗するルーキー、その違いは何か。ダイレクトにそう鄭大世に聞くと、返ってきた答は「正直、ない」だった。

 プロサッカーの世界で生き残れるのは、ひとつまみの選手だけ。プロになってもむしろ成功できないのが当たり前で、だから明確な答は出せないというわけである。

 ただ、若いうちから海外で活躍する日本人選手を見ていると、「満足していない。試合に出られないとか、メンバーに入れない時の熱量が半端ではないという共通点がある」と鄭大世は感じるという。

「本当に難しいのはプロになってからで、そのステージでは30代とか経験豊富なベテランと争わないといけない。そうした環境で試合に出られない時にどれだけ歯を食いしばってやれるか。どれだけ悔しい想いが強いか、夢が大きければ大きいほどその選手は実現していく」(鄭大世)

 どこに目標を設定しようが、その1日をどれだけ全力で生きるかがすべて。自分の理想と現実のギャップに打ちひしがれながらも食らいついていく、いわば"ネガティブパワー"が重要というのが鄭大世の持論である。

 そんな鄭大世が「このルーキーは凄い」と思った選手が鈴木唯人(現ストラスブール)だ。

「練習参加の高校生はだいたい落ち込んで帰っていく。だから、どうせこの選手も同じように落ち込むんだろうなあと思っていたけど、なんの遜色もなくやれていたのが鈴木唯人でした。普通にやれているというか、むしろ活躍していてコイツは凄いと思いました」

 ちなみに、今年でプロ2年目の松木玖生については「(自分が町田時代に)練習試合で対戦しましたが、ひとりだけ気迫が違って何かをしようとする、チャレンジしようとする。球際とかの些細な1プレーでも何かしてやろうという気概を感じました」と鄭大世はコメントしていた。
 

 サッカー選手という職業がいかに厳しいかは、鄭大世の言葉が物語る。

「引退してこんな穏やかに生活できているのが最高です。それだけ戦っていたし、それだけ本気でやっていました。ハイリスク・ハイリターンで、これだけ苦しいから喜びも半端ない。シーズンが始まれば、スタメンの選手、そうではない選手で線引きされて、毎週天国と地獄を行き来する。1週間前はゴールを決めたのに、次の試合はスタメンから外れるケースもあるわけで。いやあ、メンタル的にだいぶ擦り切れていましたよ」

 Jリーガーになることさえ困難だが、プロになった先はさらに難しい。プロサッカー選手として生き残るのは、奇跡と言っても大袈裟ではないだろう。

構成●サッカーダイジェストTV編集部

【動画】成功するルーキー、失敗するルーキー、その分岐点は?

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