連載|熊崎敬【蹴球日本を考える】浦和 年間王者へのカギは?

2015年11月23日 熊崎敬

チャンピオンシップではどちらの顔を見せるのか。

あと一歩のところでタイトルを逃しているペトロヴィッチの浦和。チャンピオンシップは内なる戦いと言っていいだろう。 (C) SOCCER DIGEST

 苦手としてきた埼スタでの最終節、浦和は神戸に5-2と圧勝し、G大阪とのチャンピオンシップ準決勝に向けて弾みをつけた。
 
 記者会見でペトロヴィッチ監督は、90分を3分割して次のように振り返った。
 
「最初の30分は強いモチベーションで入り、我々のいい部分が出た。次の30分は少し不安定な状態でゲームが進んだ。最後の30分では自分たちのサッカーを取り戻すことができた。つまり今日の試合では60分、良い部分を出せたが、今後を考えるとふたつ目の30分のように、しっかりオーガナイズした戦いができないようでは困る」
 
 実際にスコアを振り返ると、序盤は3-0、中盤は0-2、終盤は2-0と動きの激しいゲームだった。最後に粘る神戸を突き放したが、序盤の大量リードを生かした落ち着いた試合運びができていたら、引退する鈴木をピッチに送り出すこともできただろう。
 
 この日の浦和は、良い面と悪い面のふたつが顔をのぞかせた。
 
 良かったのは、チャンスを効率よく得点に結びつけたところ。悪かったのは敵のプレッシャーに守備陣が浮足立ち、2点を献上したところだ。那須、森脇を欠いた3バックは安定感を欠き、そのしわ寄せでGK西川も窮屈なプレーを強いられた。
 
 待ち構えるチャンピオンシップ、果たして浦和はどちらの顔を見せるのだろう。
 
 年間王者を争うG大阪、広島との比較について尋ねられたペトロヴィッチ監督は、「3つの中で浦和だけスタイルが違う」と述べた。
 
「G大阪と広島は守備から入るチーム。特に広島は我慢することができる。反対に我々はつねに主導権を握り、相手を打ち負かそうとする」
 
 年間王者へのカギ、それは指揮官の言う攻撃的な姿勢を保ち続けられるかにある。
 
 ペトロヴィッチの就任から4年、浦和はいいところまで勝ち進みながら、タイトルを逃し続けてきた。2013年、14年は終盤の失速によってリーグタイトルを逃し、13年にはナビスコカップ決勝で柏に0-1と敗れた。
 
 肝心かなめのところで勝てないのは、なぜか。
 
 それは内容で敵を圧倒していても、ゴールを決められないと自信や覚悟が揺らいでしまうからだ。自分たちのサッカーに疑念が芽生え、中途半端に守りに入ろうとして墓穴を掘ってしまう。
 
 昨シーズンの32節、埼スタで迎えたG大阪との首位攻防戦がそうだった。チームとしての成熟度の違いを示しながらも、攻撃的な姿勢を貫けずに自滅。名古屋との最終節でも、逆転負けを喫した。
 
 勝てない歴史に、いまこそ終止符を。
 
 浦和にとって、チャンピオンシップは内なる戦いと言ってもいいかもしれない。
 
取材・文:熊崎敬
 
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