「僕は中村憲剛と内田篤人には絶対に勝てない」。鄭大世が語るサッカー解説“新時代”

2023年02月17日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

「気持ち」を連呼する解説は「うちのお母さんでもできる」

今やサッカー解説でも活躍中の内田篤人と中村憲剛。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)/JMPA

 昨季限りで現役を引退した鄭大世は今、解説の仕事が「めちゃくちゃ面白い」と感じている。その語り口は好評で、例えば三笘薫が出場したプレミアリーグの試合では「ミトマジック」のようなフレーズでインパクトを残す。ただ、本人曰く「いくら僕の解説が面白いとなっても、中村憲剛と内田篤人には絶対に勝てない」。

 自分もそこに辿り着きたいという想いがある一方、「他人との比較がどれだけおかしな行為か」も分かっている。「正直、彼らのことは気になるし、ああなりたい気持ちもある」が、そこに対抗心を燃やしても意味がないのを十分に理解しているのだ。

 だから、鄭大世は解説業において独自路線を貫くつもりである。「僕はフォーメーションでここに当てて、ここに穴があくからとか、正直あまり分かってなくて。ただ、繊細な性格なので、この選手が今なんでこうしたのか、心理面的なところは分かる。今なぜ審判がファウルを取ったか、カードを出したかとかも分かる。そこを説明する解説が受け入れられているので、そうやっています」

一視聴者としてサッカー解説を聞く場合、鄭大世がしっくりこないのは「気持ち」を連呼するケースだ。「それは解説じゃなくて、うちのお母さんでもできる(笑)」というのが彼の持論である。
 

 鄭大世の中でひとつの定義がある。それは「解説=松木安太郎」だ。「賛否あるのは当然として」と断ったうえで、彼はこう続ける。

「松木さんは面白い。みんなの心を代弁している。だからやっぱり受けがいい。特別なことを言っているわけではありません。(中村)憲剛さんみたいに専門的な内容を話しているわけではないですし。で、(ワールドカップの試合を解説した)本田圭佑も松木さんに近い方向性だった。見ていて凄い面白かったですよね。彼はサッカーの話ももちろんできますが、個人的な話もするわけじゃないですか。『何やってんね!』みたいな(笑)。それを観て、新しいと思いますよね」

 地上波ではあり得ない解説がSNSの普及などにより広まったことで、「いろんな人の話が聞けるようになった」と鄭大世はいう。「解説の可能性が広がって、裾野も広がっている感じがする」のは確かだろう。実際、多角的な視点での解説はYouTubeでも見られ、コア層もライト層もそれぞれに合った分析を楽しむようになっている。

 まさに、サッカー解説、新時代。それを牽引するひとりが、鄭大世なのは間違いない。

構成●サッカーダイジェストTV編集部

【動画】鄭大世が独自見解。「サッカー解説"新時代"」

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