チームレベルが上がっても“主役”となった久保建英。アトレティコでもがき、新天地を求めたJ・フェリックス…適応できる場所を探すのも大事な仕事だ

2023年02月13日 小宮良之

「なぜJ・フェリックスは成功できなかったのか?」

ソシエダで躍動している久保(左)と今冬にチェルシーへレンタル移籍したJ・フェリックス。(C)Getty Images

 ポルトガルサッカーが生み出した最高のタレントの一人であるジョアン・フェリックスだが、アトレティコ・マドリーでは成功を収められず、期限付きだがチェルシーへ移籍した。

「なぜ、J・フェリックスは成功できなかったのか?」
 
 スペイン大手スポーツ紙『アス』はウェブで質問に対するアンケートを取った。「本人の責任」が約40%、「ディエゴ・シメオネ監督の責任」が37%、「両方の責任」が23%になっている。単純化することは難しい。様々な理由はあるのだろうが、適応力を問うか、適応性を問うか、で意見が分かれるだろう。
 
 少なくともJ・フェリックスは、シメオネのリアクション戦術にアジャストしようと、守備にも頑張っていた。短い期間だが、うまくいっていた時期もあった。優勝した2020-21シーズンの前半戦など最たるものだろう。しかし、シーズンを通してはどうしてもそりが合わず、最大の魅力である攻撃的なボールプレーを見せられなかった。
 
 シメオネもJ・フェリックスのひらめきや非凡なコントロール、キックをどうにかチーム戦術に落とし込もうとしていた。しかしチームのプレー信条を考えた場合、ハードワークを求めるしかなかった。J・フェリックスを生かそうとすると、どうしても矛盾が生まれた。
 
 こうした"すれ違い"は珍しくない。
 

 選手の理想は、どのチームでも力を発揮できることにある。ただ、チームにしがみつくべきなのか。プレースタイルに最初からフィットしていた方が負担は少なく、最大限のパフォーマンスができるのも真理である。

 たとえチームレベルが上がっても、活躍するケースは少なくない。今シーズン、マジョルカからレアル・ソシエダに移籍することになった(レアル・マドリーからの完全移籍の形)久保建英は、まさにそれが当てはまる。

 久保はラ・リーガで残留争うマジョルカで、最後はメインキャストの座を失っていた。しかしヨーロッパリーグでベスト16に進み、リーガで3位と躍進しているレアル・ソシエダで、主役として名を轟かせている。マジョルカでは守備に汲々とし、コンビネーションも限定的だった。それがレアル・ソシエダでは攻撃的な陣容で挑み、ダビド・シルバのような一流選手との連係で才能が引き出されているのだ。

「このチームは今までとまったく違う。ボールを持てますし、それが僕を良い選手にしてくれる。だから、僕もチームメイトを良い選手にしたい」

 久保本人が語るように、最高の相互関係ができあがっているのだろう。イマノル・アルグアシル監督が求めるサッカー像と合致していたのだ。

 選手は今いる場所でアジャストするために全力を尽くすべきだが、いるべき場所を探すのも、大事な仕事と言えるだろう。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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