【指揮官コラム】特別編 三浦泰年の『情熱地泰』|タイの友人に語った「教育論」と「最強論」

2015年11月19日 サッカーダイジェスト編集部

「教育すると、人間は弱くなる!」と友人からLINEが届いた。

8か月間に渡り指揮を執った思い出深きタイの地。そのタイに住む友人から一通のLINEが届いた。(C) SOCCER DIGEST

 先週末、僕はJリーグのすべてのカテゴリーの試合を観戦した。観戦というか視察と言っても良いだろう。約1年間、Jリーグの試合を見てこなかったこともあり、日本に帰ってきてから見るそのサッカーはどれも新鮮に映った。
 
 前回は土曜日に浦和-川崎、日曜日に横浜FC-大分に足を運び、先週末は水戸-札幌をスカパーさんに頼まれ解説し、翌日は雨の影響で用事がひとつキャンセルになったので急遽、町田-秋田の試合を見るために車を走らせた。
 
 J1、J2、J3と3つのカテゴリーを確認でき、久しぶりのJリーグ観戦で感じとれるものも多かったが、それについてはまたの機会にしよう。
 
 話は変わるが、タイを離れてから1か月半が過ぎたある日、チェンマイの友人からLINEが届いた。
 
 僕は友人に、先週末にJリーグを観戦した際のスナップ写真を送ったのだが、その返信としてこんな質問が来た。
 
 テーマは2つあった。
『教育すると、人間は弱くなる』
『最強とは?』
このふたつについてどう思うか?
 
 友人は武術家であり、格闘家なのだが、彼はサッカー人としての角度で僕がこれを聞いてどう感じるかを知りたかったようだ。僕はこのLINEでの質問について少し長めの返事を書くことにした。
 
 ひとつ目の『教育すると、人間は弱くなる!』は、ドキッとする質問だ。監督の仕事は教育、躾みたいなモノだと思っている、僕にとってはしっかり考えて返信しなければと思った。しかし相手は僕の直感での返事が欲しいのだろうと思い、即座に返事をすることに決め、少し長めの返事を書いた。
 
『いつ』『何を』教育するのか? 「教育は人間を弱くする」は、一瞬、プレーヤーメンタリティーのままいる人間(指導者)が使いそうな言葉だと感じた。ただ「一理ある!」と……。
 
 僕はこの人の言うことに共感しようとせず、感じたことを言う。まず指導者が、または教育者が人を教え、育てようとしなかったら彼らはなんなんだ? 弱い奴を強く、強い奴をもっと強くするのが本質だと思う。もちろん亀を指導・教育するのと、ウサギをするのでは違う。
 
 そして日本はといえば、努力させるという亀指導が主流であろう。ただ指導者・教育者であれば(能力の高い)ウサギを教え、成長させることのできる指導者にならなくてはいけないのである。
 
 能力があろうがなかろうが、あるいは努力しようがしまいが、優秀な指導者に出会えれば人はみな、なんらかの成長が見込めるのだ……。そんななかで『教育すると、人間は弱くなる!』という類の言葉はよく聞く。成長させる手段としての教育に対する考え方であろう。それは教えないで自ら導き出すという意味であり、現役選手として才能があった人こそ使う言葉だ。
 

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