練習では物怖じせずパスを要求する場面も。新天地ストラスブールで新たな一歩を踏み出した鈴木唯人、「チームを助けられる選手になりたい」と意気込み【現地発】

2023年02月01日 元川悦子

「自分からアクションを起こせる」と川島も太鼓判

初の海外移籍でリーグ・アンに挑戦。「こっちに来て、本当に楽しい」と充実の日々を送る。写真:元川悦子

 2024年のパリ五輪で、日本の攻撃陣の主軸を担うと期待されている鈴木唯人。3シーズン所属した清水を離れ、1月28日に欧州5大リーグの一角を占めるフランス1部ストラスブールへのレンタル移籍が発表された際には、驚きを覚えたファンも少なくなかっただろう。

 ただ、本人は初めての異国に全く戸惑うことなく、積極果敢にチャレンジしている。新天地合流3日目の30日、鈴木のトレーニングの様子を見る機会に恵まれたが、まだ言葉の通じないなかでもチームメイトと身振り手振りで意思疎通を図り、ゴール前の鋭さを強く押し出す姿が印象的だった。

 前日にトゥールーズ戦があったため、参加者はベンチ外の10人程度。時折、小雪の舞う厳しい環境だったが、鈴木は鳥かごや4対4+フリーマンの練習でも物怖じすることなく相手に向かっていく。時には両手を大きく掲げて"ボールをよこせ"と堂々とアピールしてみせる。

 最後のゲーム形式では強烈な左足シュートを何本もお見舞い。日本人選手の多くが初めての海外で粘土質のピッチに苦しんだりするが、それもあまりない様子。これだけスムーズな入りを見せていれば、出番が訪れるのもそう遠くなさそうだ。

「彼はすごくオープンな性格。フランス語は分からないだろうけど、その環境のなかでできることをやって、味方とコミュニケーションを取っている。自分からアクションを起こせる分、適応はすごく早そうですね」と同僚の大先輩・川島永嗣も太鼓判を押す。新たな環境での第一歩はまずまず順調と言っていい。

「こっちに来て、本当に楽しいです。周りにも溶け込んでますよ。まだ仲間の名前も覚えてないし、年齢も分かりませんけど」と鈴木は練習後、爽やかな笑顔をのぞかせた。
 
 ストラスブール行きに当たっては「ここが自分にとって一番良いクラブだと思った。欧州5大リーグのクラブからオファーをもらえるなら選択しない手はない」とほぼ即決だったことを明かした。川島がいることはあまり気にしなかったようだ。

「永嗣さんは本当に完璧な人間性の偉大な選手。僕は年齢的に半分くらいなので、『お父さん感覚』になってしまいますけど、ものすごく頼りがいがありますね。でも、何でも永嗣さんに頼っていてはいけない。自分にできることは何でもやるつもり。練習も理解できてますし、今のところは大丈夫です」と21歳の若武者は目を輝かせた。

 目下、ストラスブールは2部降格圏の17位(20節終了時)。1月9日にステファン前監督が解任され、ル・スコルネット暫定監督が引き継いだあと、リヨンに勝利するなど復調傾向を見せたが、浮き沈みのある状態が続いている。それだけに、鈴木に必要なのはチームを勝たせる明確な役割。そこは清水時代と変わらない。

「今、チームは降格圏なので、早く自分が助けられるようにしたいですね。ポジションは2トップのどちらかに入るのでは。練習をまだ何回かやっただけで、よく分からないですね。練習の強度自体はものすごく高いわけではないですけど、本番になると迫力もスピードも全然違う。早くそこに適応することが大切。どちらにしても、ゴールを求められることは分かっています。半年のレンタルに関係なく、どこへ行ってもFWに結果が重要なのは一緒。それをやるだけです」と、鈴木は自身のタスクをよく理解しているようだった。
 

次ページ1年後の五輪、3年後のW杯も見据えて

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