【消えた逸材】「何をしでかすか分からない、制御不能の危険人物」レジェンドをかけ合わせたような元フランス代表MFは、とにかく素行が悪く…

2023年02月10日 ワールドサッカーダイジェスト編集部

警察沙汰を何度も起こし、監督との衝突は日常茶飯事。

14-15シーズン、インテル時代のエムビラ。(C)Getty Images

ヤン・エムビラ(MF/元フランス代表)
■生年月日/1990年6月29日
■身長・体重/182センチ・80キロ
 
 キャリアを象徴するエピソードは、ピッチの中ではなく外でのそれだ。
 
 ハイライトならぬその〝ローライト〞は、フランスU-21代表の合宿を抜け出した夜遊び事件だ。2012年10月、U-21欧州選手権出場を懸けたノルウェーとの予選プレーオフを6日後に控えた土曜の夜、アントワーヌ・グリーズマンやウィサム・ベン・ヤーデルらチームメイト数人とともに無断で外出。合宿地のル・アーブルからパリまでタクシーを飛ばし、シャンゼリゼのナイトクラブで朝まで羽目を外した。
 
 門限破りは当然のように露見して、FFF(フランス・サッカー連盟)の規律委員会から呼び出しを食らい、12年11月、厳しい処分が下る。14年6月まで1年7か月の出場停止を言い渡され、すべてのカテゴリーの代表チームから締め出されたのだった。
 
 この2年前の10年8月、20歳でA代表デビューを果たすと、EURO2012のメンバーに選ばれて大舞台を踏んだ。その夏の移籍市場ではアーセナル、リバプール、マンチェスター・ユナイテッド、レアル・マドリー、インテル・ミラノといった名だたるメガクラブが触手を伸ばし、まさに〝ブレイク前夜〞というところで犯した愚行だった。
 
 ヤン・エムビラは、レンヌの下部組織で育ち、17歳でプロ契約を結んだその当時から評判の逸材だった。プロデビューさせた当時のフレデリック・アントネッティ監督は激賞した。
 
「クロード・マケレレのようにゲームを読み、パトリック・ヴィエラのようなプレゼンスを発揮し、トゥーレ・ヤヤのようなパスセンスを持っている」
 
 リーグ・アンでもっとも才能に恵まれた若手有望株と、誰もが口を揃えて絶賛した。
 
 しかし、素行がとにかく悪かった。警察沙汰を何度も起こし、監督との衝突は日常茶飯事。EUROでは交代で下がる際にロラン・ブラン監督との握手を拒否し、インテルでも同じことをしてロベルト・マンチーニ監督を激昂させた。
 
 この結果、1年間のレンタル契約が途中で打ち切られ、保有元のルビン・カザンに追い返された。レンヌの元監督でアントネッティの前任者のギ・ラコンブは、「何をしでかすか分からない、制御不能の危険人物だった」と振り返る。
 

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