連載|熊崎敬【蹴球日本を考える】鹿島 中村を消し去った駆け引きの巧みとカイオの出色

2015年11月08日 熊崎敬

ふたりのFWが身体を寄せて中村のロングパスを封じる。

相手の司令塔の中村を封じ込め、横浜に快勝した鹿島。攻撃では全2得点を挙げたこのカイオの出来が素晴らしかった。 (C) SOCCER DIGEST

 リーグ戦10試合連続無敗、第2ステージ最少失点を誇る横浜を、鹿島があっさりと退けた。首位の広島が勝ったため、逆転優勝は苦しくなったが、先週のナビスコカップ決勝に続く完勝と充実の秋を迎えている。

【PHOTOハイライト】鹿島 2-0 横浜
 
 鹿島は90分のほとんどで主導権を握った。それは中村に自由にプレーさせなかったからだ。
 
 立ち上がりの2分、小笠原があいさつ代わりに背後から中村を倒すと、やがて中村はトップ下のポジションを捨て、自陣後方でパスを受けるようになった。
 
 これは決して悪い選択ではないと思う。
 一発で局面を変える左足を持つ中村にとっては、敵のゴールから遠ざかっても、自分のリズムでボールを持つことが大切なのだ。
 だが中盤の底まで引いても、中村は自由にプレーさせてもらえなかった。
 
 石井監督就任以降、高い位置からの守備を浸透させた鹿島はふたりのFWがしっかりと身体を寄せることで、中村のロングパスを封じ込めた。33分には何度も最終ラインからパスをもらったが、すべて後ろに返すことになった。
 
 鹿島は中村をゲームから消し去ることで、横浜の力を削ぐことに成功した。このあたりの駆け引きの上手さは、さすがは鹿島といったところだ。
 
 チームとしての成熟度の違いを見せた鹿島、その中でも2ゴールを決めたカイオは出色の出来だった。
 
 ベストヤングプレーヤー賞に輝いた昨年、私は当連載で彼のことを「(敵にとって)とにかく面倒くさい男」と記したが、あれから1年が経ち、さらにスケールアップした感がある。
 
 その成長ぶりを石井監督は、次のように評した。
「去年は持ち過ぎのきらいがあったが、いまは周りとの連携のバリエーションができてきている」
 
 カイオは元々、一発で敵の背後を取る怖さを持っていたが、プレーが一本調子になるときがあった。だが2年目の余裕があるのか、いまは様々な形で敵が嫌がるプレーを繰り出している。
 
 ふたつのゴールだけでなく、カイオは随所に卓越したテクニックを見せつけた。肩でパスを出したと思えば、ボールを踏みつけながらの引き技を見せる。
 
 背番号7が躍動するたびにスタジアムは沸き、対面の小林が苛立ちを募らせる羽目になった。
 
 鹿島の今シーズンは、あと1試合で終わることになりそうだ。魅せて勝たせるカイオのプレーが長く見られないのは残念なことだ。
 
取材・文:熊崎敬
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