なぜドイツは日本代表を圧倒しながら敗れたのか。母国記者に訊く。「正直、吉田が穴になると思っていたんだが…」【2022総集編】

2022年12月24日 中野吉之伴

「10回対戦したら8回はドイツが勝つような試合展開だった」

浅野(右)の決勝ゴールでドイツはまさかの逆転負けを喫した。(C)Getty Images

 今年も残すところあと8日となった。本稿では、2022年のサッカー界における名場面を『サッカーダイジェストWeb』のヒット記事で振り返る。今回は、カタール・ワールドカップで日本代表に敗れたドイツの記者に敗因を訊いた記事を再掲する。

記事初掲載:2022年11月27日

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 カタール・ワールドカップのグループリーグ初戦で日本代表は4度優勝のドイツを相手にリードを許しながら、終盤怒涛の追い上げで2-1の逆転に成功した。

 歴史的な逆転勝利に沸いた日本に対して、ドイツはまさかの敗退に意気消沈。次戦スペインに勝利できないと2大会連続となるグループリーグ敗退となる可能性が高い。ドイツ人ジャーナリストは日本戦をどのように見たのだろうか。ブンデスリーガ公式サイトで記者として活躍するカロル・ヘアマンに話を訊いた。

――日本対ドイツの結果について、率直な印象を教えてください。

「日本が難しい相手になるというのは、試合前からわかっていた。多くの選手がブンデスリーガでプレーしているし、激しい試合になるだろうと予想していた。ドイツが負ける可能性だってあるとは思っていた。ただ、改めて試合展開を考えると、序盤からかなり一方的な流れをドイツが作れていたし、試合の主導権を握っていたので、こうした試合結果になったことには驚いている。

 正直、10回対戦したら8回はドイツが勝つような試合展開だったと思う。全体的にもっと互角な戦いを想像していたし、それだけにあの試合展開であの試合結果になったことに驚いている」
 

――たしかに65分頃まではドイツが優勢でしたし、多くの専門家が口にしていたように、あれだけチャンスがありながら2点目が取れなかったのが問題だったというのはあるのではないかと思います。一方でドイツが1点リードしていたのは変わらないので、あそこで無理をせずにもう少しゲームをコントロールして、守備への比重を高めてカウンター狙いに切り替えるという選択肢を取る必要もあったのでしょうか?

「2点目を決めるのが重要だったというのは間違いない。十分なチャンスはあった。数字で見たら、ドイツは全てのデータで大きく上回っていた。シュート数は26本対12本だし、ボール保持率は75%。日本は序盤にゴールがオフサイドとなったカウンターからの場面以外はゴール前に持ち込めていなかった。だからこそ2点目を決めなければならなかった。

 個人的にターニングポイントとなったのは(イルカイ)ギュンドアンの途中交代だと思う。そこから守備と攻撃に問題を抱えるようになってしまった。パスの出口が無くなってしまった。チームとしての構造が乱れ、その直後に日本のチャンスが生まれたことにもつながっている」

――ギュンドアン交代が問題になったというのは話題に上がっていますが、それでもピッチ上には多くの経験豊富な選手が残っています。チャンピオンズリーグでいつもプレーしている選手ばかりです。ギュンドアンが交代した後、流れがいまいい感じではないというのに気づいて、自分たちで修正してというのはできなかったのでしょうか?

「例えば落ち着けるためにボールを自分たちでキープし続けることはもちろん重要だ。でも持ち続けることは簡単ではないし、堂安(律)、浅野(拓磨)というスピードがあり危険な選手が途中で入ってきた時間帯でもあった。ただ正直、浅野があそこまでのプレーを見せるとは思ってもいなかった。ケガで長期離脱していてブンデスリーガでも復帰できなかった。それがワールドカップで突然出場して、あんなすごいプレーを見せるとは。

 いずれにしてもドイツサイドにとっても簡単な時間帯ではないのはわかるが、それでも日本にプレスをかけ続けることが重要だった。彼らに余裕をもってボールを持たせてはいけなかった。ドイツは守備に問題を抱えている状態だった。(ヨシュア)キミッヒや(ジャマル)ムシアラというボールを持てる選手がいた。本来、(ニコ)シュロッターベックや(ニクラス)ジューレだって、ビルドアップで上手くパスを回せる選手だが、起点がなくなったことで不安定になってしまったのは否めない。それだけに交代選手で構造が乱れたという事実は残る。

 あと、ムシアラは私からしたらドイツで一番優れた選手。交代させるべきではなかった。ゴールを決めるのは時間の問題というところだったと思うんだ」

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