世代交代の意味――高齢化する日本代表に必要なのはオーウェン、ハメスのような新星か、さらなる成熟度か?

2015年11月06日 加部 究

大舞台でラッキーボーイがチームを成功に導いた例は枚挙にいとまがない。

ブラジルW杯で一躍その名を世界に轟かせたハメス・ロドリゲスは、当時22歳だった。年齢的にはロシア大会での南野が同じ歳に当たるが、果たして……。(C) Getty Images

 日本代表に勢いが感じられない。ブラジル・ワールドカップでの敗退からリスタートを切り、1年を経過した今も日本代表はピッチ上で溌剌とした躍動感を生み出せずにいる。主力選手の高齢化が指摘される一方、新顔の台頭がそれほど旺盛ではない現状を見れば、やはり世代交代の遅れが原因と言えるのか……。
 スポーツライターの加部究氏が、各国代表チームの例を紐解きながら難局に直面する日本代表の打開策を探る。
 
【写真】ワールドカップで輝きを放ったラッキーボーイたち16選
 
 もし11月5日に発表された今回の日本代表メンバー23人が、そのままロシア・ワールドカップに出場した場合、平均28.3歳で開幕を迎えることになる。前回ブラジル大会で最も平均年齢が高かったアルゼンチンが28.5歳だから、ほぼ変わらない水準である。現在レギュラー格の長谷部誠はブラジル大会時の遠藤保仁と同じ34歳になり、ロシア大会の開幕前日に誕生日を迎える本田圭佑は32歳で3度目のワールドカップに臨むことになる。
 
 ここ数年、日本代表と対戦した多くの監督たちは「経験豊かなチーム」と評してきた。実際ブラジル大会に臨んだチームは、代表でも欧州でも十分なキャリアを積んだ選手が軸を成し、アルベルト・ザッケローニ体制ではメンバーの固定化が顕著だったので、そういう印象を与えたに違いない。
 
 さらにハビエル・アギーレ、ヴァイッド・ハリルホジッチ両監督が引き継いでも、あまり主力の顔ぶれに変化がなく高齢化が危惧されたが、それでもブラジル大会の代表は約半数の12人が外れ緩やかに変化の兆しを見せている。ただし同大会では年齢的に若かった権田修一、大迫勇也、柿谷曜一朗、斎藤学らが外れているので、顔ぶれが変わっても必ずしも世代交代が進んだとは言い切れないのも事実だ。
 
 大舞台でラッキーボーイの存在が明暗を分けるというのは使い古された言葉だが、実際にワールドカップでも勢いのある若い選手がチームを成功に導いた例は枚挙にいとまがない。古くは1958年スウェーデン大会で17歳のペレがブラジルを初優勝に導き、それが黄金時代の幕開けとなった。
 
 1982年スペイン大会では、18歳のジュゼッペ・ベルゴミが重要なブラジル戦でデビューを飾り、以後優勝に大きく貢献したし、1998年フランス大会では、同じく18歳のマイケル・オーウェン(イングランド)がアルゼンチン戦で鮮烈なゴールを叩き込んだ。最近では昨年のブラジル大会で、22歳のハメス・ロドリゲスがコロンビアを牽引し、日本も手痛い目に遭っている。

次ページ一時代を築いた中心選手たちは伝説となる一方で……。

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