“コラージョ”が欠けていた森保ジャパン。またも届かなかった8強。一発勝負のトーナメントでいかに戦うべきだったか【W杯】

2022年12月07日 河治良幸

狙われたファーサイドの“高さ不足”

55分に痛恨の失点。クロアチアはディテールを突き詰め、日本のゴールをこじ開けた。(C)Getty Images

[カタール・ワールドカップ ラウンド16]日本1(1PK3)1 クロアチア/12月5日/アル・ジャヌーブ・スタジアム

"コラージョ"が欠けていた。

 クロアチア戦の失点シーンで、日本に何が起きたのか。

 森保ジャパンはクロアチアに1-1、延長戦でも決着がつかず、PK戦の末にラウンド16での敗退が決まった。またしても16強の壁を越えられなかったわけだが、パフォーマンスとしては90分内の勝機もあっただけに、振り返ると悔やまれるところもある。

 サッカーの試合としては引き分けなので、"敗因"というワード自体が相応しくないかもしれない。ただ、前田大然のゴールにより1-0にしてから、追加点で突き離せなかったこと、後半に1-1にされてからもう一度、自分たちの時間帯を引き戻せなかったことなど、大きな視点でも"新しい景色"にたどり着けなかった要因が浮かんでくる。

 そうしたなかで1つ整理しておきたいのが、イバン・ペリシッチに決められた55分の失点シーンだ。

 右CBのデヤン・ロブレンからゴール左に目がけて上げられたクロスボールに、ペシリッチがヘッドで合わせた。やや距離が遠いかに見えたが、クロスボールに対してポジションをずらしていたGK権田修一の逆を突いて、ゴール右すみにワンバウンドで突き刺さった。

 一見してシンプルなこの攻撃に、クロアチアの明確な狙いが表われている。日本は自陣の守備において5バックを敷いて、クロアチアの進出スペースを埋めながらラインを押し上げるディフェンスを取っていた。
 
 しかし、徐々に前からのプレスが効かなくなり、1トップの前田も中盤の4枚も5バックに引っ張られるように、前からのプレッシャーがかからなくなっていた。

 後半のクロアチアは全体を押し上げて、ハイプレスから勇気を持って、攻撃に人数をかけていた。日本はその圧力に押されてボールを簡単に蹴っては失ったり、ベタ引きに近い状態になっていた。そこでクロアチアが狙っていたのがファーサイドの"高さ不足"だ。

 左右のウイングバックは長友佑都と伊東純也だ。身長だけで見ると長友が170センチ、伊東が176センチだが、伊東は対角線のクロスをヘディングで跳ね返すというプレーにあまり慣れていない。

 そこを187センチのペリシッチに狙われた。これは失点シーンだけでなく、前後のクロアチアの攻撃にも表われている。

 それを踏まえて失点シーンを検証すると、クロアチアは右サイド(日本から見て左サイド)に日本のディフェンスを引き付ける"餌撒き"をしている。4ー3ー3の中盤のアンカーであるマルセロ・ブロゾビッチがこの局面では右に流れて、ボランチの守田英正と左サイドハーフの鎌田大地を引き付けながら、右外のヨシップ・ユラノビッチにグラウンダーのボールを出した。

 そうなると長友がユラノビッチに行くが、ブロゾビッチがリターンを受けるふりをすることで、守田と鎌田をそのまま同サイドに引っ張り出しておいて、手前のスペースに出てきた右CBのロヴレンが斜めのバックパスを受けた。

 この時点で日本は逆サイドの伊東まで、ペナルティエリアの内側まで絞らざるを得ない状況に。それでも日本の中央部には谷口彰悟、吉田麻也、冨安健洋と屈強な3バックが揃い、彼らの外側に伊東という構図になっていた。

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