PK戦に“持ち込まれた”クロアチア戦、森保Jはなぜ敗れたのか。ビルドアップの駆け引き、プレー精度など改善ポイントは山ほどある【W杯】

2022年12月07日 清水英斗

前半はブロックの網を張る戦い方はほぼ機能していた

決勝トーナメント1回戦でクロアチアに敗れ、ベスト16敗退となった日本代表。多くの課題が見えた試合となった。写真:金子拓弥 (サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

[カタール・ワールドカップ ラウンド16]日本1(1PK3)1 クロアチア/12月5日/アル・ジャヌーブ・スタジアム

 カタール・ワールドカップのラウンド16、E組を首位突破した日本は、F組2位のクロアチアと対戦。延長戦を含めて120分では1-1だったが、最後はPK戦の末に1-3で敗れ、ベスト16で大会を去ることになった。

 4-3-3を敷くクロアチアに対し、日本はシステムを4-2-3-1に戻して形をかみ合わせて戦う予想もあったが、グループステージで勝利したスペイン戦の流れを継ぎ、再び3バックの3-4-2-1で試合に臨んだ。

 セットした守備時は両ウイングバックが下がって5-4-1となるため、4-3-3を敷くクロアチアとのマークはかみ合わない。日本は人合わせではなく、ブロックの網を張り、待ち構えるやり方を選んだ。

 これはほぼ機能していた。中盤のモドリッチやコバチッチが飛び出しを狙うスペースは、あらかじめ谷口彰悟と冨安健洋が抑えておく。かみ合わせ的にはアンカーのブロゾビッチが浮きやすく、ここに入ったボールをどう制限するかが課題だが、日本は上手く対応した。
 
 1トップの前田大然が背中でブロゾビッチを消しながら相手のCBへプレッシャーをかけ、それに合わせて反対側から遠藤航や守田英正が前へ出て、ブロゾビッチのマークを受け取る。日本はスペイン戦同様に、1トップとダブルボランチで形成される三角形の中に相手のアンカーを置き、受け渡しながら守備を行なった。

 基本的に相手のCBにプレッシャーがかからないので、自陣に下がらざるを得ないが、守備は安定し、クロアチアに与えたチャンスは少なかった。

 唯一、日本の左サイドでクラマリッチと対峙した長友佑都の背後を取り、SBのユラノビッチやモドリッチが飛び出してくる形は、サイドが2対3の数的不利に陥る怖さがあった。しかし、日本は守田のカバーリングも利き、ピンチには至らず。

 また日本は5-4-1で終始引きっぱなしではなく、相手ゴールキック時など機会があれば、3バックが相手の3トップと同数になるリスクを受け入れ、ハイプレスに行った。8分にGKリバコビッチのロングキックから、冨安が倒されてペリシッチにシュートを打たれた場面など、ヒヤリとする瞬間はあったが、全体的にはよく抑えていた。

 すると前半終了間際の43分、日本は右CKから先制に成功する。

 堂安律がショートコーナーで始めると、鎌田大地、伊東純也とのパス交換から、再び堂安が左足でクロス。CKをゾーンで守るクロアチアに対しては、真横から正直にクロスを入れても、そびえ立つ壁に跳ね返されるだけ。そこで日本は一旦ショートで始め、相手のラインアップを誘導し、壁を動かしてからGKの間にスペースを空けた。そこへ堂安が左足でゴールへ向かって曲がるクロスを蹴り、味方を飛び込ませ、こぼれ球を前田が押し込んだ。

「セットプレーに工夫がない」と散々言われた森保ジャパンだが、この土壇場で相手の特長を逆手に取ったパターンを披露し、先制ゴールを挙げた。前半は日本ペースと言っていい内容だった。
 

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