【アナリスト戦術記】劇的逆転勝ちのドイツ戦で見えた森保ジャパンの現在地。次のコスタリカ戦に向け、改善したい点は…【W杯】

2022年11月25日 杉崎健

スイッチプレーはわずか2回

図1:自陣の攻撃

 サッカーの奥深き世界を堪能するうえで、「戦術」は重要なカギとなりえる。確かな分析眼を持つプロアナリスト・杉崎健氏の戦術記。今回はカタール・ワールドカップの初戦、ドイツ戦を深く掘り下げる。

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 優勝候補の1つに挙げられたドイツ代表を相手に、2-1の逆転勝利を収めた日本代表。今回はこの試合を対象に振り返る。

 戦前、ドイツを分析すれば、どのような戦術を敷いてくるかは把握できた。森保監督やスタッフ陣も同様にチェックしたはずで、可変式に攻撃を繰り出してくること、後半の時間の経過とともに破綻していく姿も目にしたはずだ。

 それを踏まえて、局面ごとに振り返りながら、今後の戦いに向けてさらなる向上を期待しつつ、本投稿としたい。

 まずは日本の攻撃について。自陣での攻撃は、前後半ともに苦労した印象だ。相手の強度やスピード感は映像だけでは伝わらない。特に前半は、ボランチの遠藤選手と田中選手を経由することができず、GKや最終ラインからロングボールで回避する姿が多かった。彼らだけでなく、実際のピッチでボールを受けた時、相手の圧力を想像以上に感じ取ってしまったかもしれない。

 図1は27分のシーン。板倉選手から下がって受ける酒井選手にボールが入ったのに対し、相手の左SBであるラウム選手が前に出た。当然、その後ろが空き、伊東選手が浮くため、そこを狙ったがタッチラインを割ってしまった。
 
 この時、ボランチの田中選手は下がってサポートしようとしたがギュンドアン選手に監視され、遠藤選手はミュラー選手に見られていることもあり、歩いていた。また、鎌田選手はボールとは逆サイドにいて受けられる位置ではなかった。

 このシーンは偶然だったわけではなく、少しさかのぼるが16分の吉田選手が出しどころに迷って権田選手に戻したのも同じで、20分は板倉選手からのミドルパスを前田選手が落とし、酒井選手が裏を狙ったがシュロッターベック選手に渡してしまったシーンもあった。

 解決策としては、ボランチが恐れずボールを中央で受け、サイドを変えることも必要になってくる。FIFAのデータサイトによると、この試合のスイッチプレー(サイドチェンジ)は2回しかなかった。

 後半は日本がシステムを5バックに変更したこともあり、ビルドアップも形が変わった。67分は下がって受ける鎌田選手と、最終ラインに落ちた田中選手がパスを出した後で前に出て「中央」で関わったことで、相手の矢印を変えさせ、結果的に吉田選手のロングフィードに酒井選手が抜け出し、浅野選手がボックス内でシュートを打つまでに至れた。

 次のコスタリカ戦も、3戦目のスペインが相手でも、恐れずボールを受けるボランチの姿を期待したい。
 

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