【松本】今季を象徴するような逆転負け――奇跡を起こさない限り、残留は夢物語でしかない

2015年10月24日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

“勝てそうな雰囲気”が感じられなかった。

ホーム最終戦で痛恨の逆転負け。熱狂的なサポーターたちの前で、チームは意地を見せることはできなかった。写真:徳原隆元

 結果的には、今節の降格を免れただけ。置かれた状況は絶望的だ。残り2節の時点で、年間15位の新潟との勝点差は6。数字上は残留の可能性はあるものの、新潟との得失点差が8も離れていることを考えれば、奇跡でも起きない限り、残留は夢物語でしかない。
 
 鳥栖との一戦は、前半を0-0で終え、後半にオビナのPKで先制するまでは良かった。しかし、その後は攻撃の強度を上げてきた相手の圧力に屈して2失点。それまでは何度も間一髪でピンチを切り抜けていたが、そうした粘り強さが90分間続かなかった。隙を与えて失点を許せば、追加点を奪いに行くだけの力もない。同点とされてからの反発力に乏しく、簡単に逆転ゴールを許してしまった。
 
 負けるべくして、負けた――勝てるチャンスがなかったわけではないが、リードを得ても"勝てそうな雰囲気"が感じられなかったのが、正直なところだ。
 
 先制点の場面にしても、相手の守備網をこじ開けたわけではない。田中のクロスに走り込んだ安藤がエリア内で倒されて、PKを獲得。泥臭く、ワンチャンスを活かして奪ったゴールに文句を付けるつもりはない。むしろ、"らしさ"が凝縮されていたが、別の見方をすれば、得点するには"それしかなかった"とも言える。
 
 ロングボールだけでなく、テンポの良いつなぎなど地上戦でも勝負できる鳥栖とは異なり、松本の攻撃パターンは限られたものだった。PKを含めたCKやFKのセットプレーか、カウンターに望みを託すが、そのどちらもクオリティは決して高くなく、相手に冷や汗をかかせるのは稀だった。
 
 この試合でも露呈した脆弱な攻撃力が、試合が進むにつれ、守備にも悪影響を及ぼす。ビハインドを背負った相手の勢いを撥ね退けるには、守りに入るだけでは苦しく、また守り切るだけの強固な守備力もない。だからこそ、守備の負担を軽減させるような攻撃力(あるいはキープ力)が必要なのだが、それを持ち得ていないから、守備に割く時間ばかりが増え、選手たちは疲弊し、最後はゴール前の防波堤が決壊してしまった。

【J1 PHOTOハイライト】2ndステージ・15節

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