山根ひとりの責任ではない――アディショナルタイムのPK献上はなぜ起こったのか【市川大祐が見たカナダ戦】

2022年11月20日 サッカーダイジェストWeb編集部

守備時は、相手に手数をかけさせることが肝要

カナダ戦で途中出場の山根は、終了間際に痛恨のPK献上。ただ、彼本人だけに原因があるわけでもない。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 カタール・ワールドカップ前最後のテストマッチで、日本はカナダに1-2で敗戦。相馬勇紀のゴールで先制したものの、2つのセットプレー(CKとPK)による失点で逆転負けを喫しました。

 勝負を分けた得点は終了間際に。アディショナルタイムになぜ山根視来選手のPKを与えるファウルが起きてしまったのでしょうか。

 この試合では85分に1-1の場面で南野拓実選手に代えて吉田麻也選手を投入し、4バックから3バックに変更していました。この布陣では両ワイドを攻撃的に押し上げ、勝点3を狙うのか、5バック気味にブロックを引いて勝点1を取りにいくのか、その意図がくみ取り切れませんでした。

 そうした前提がある一方で、山根選手が足を出したシーンは少し遅れ気味でしたが、もちろん、ボールを取れると思ってトライしたのでしょうし、相手がボールを受けた位置や、その後の対応が良かったことが、ファウルとなった直接的な原因です。

 ペナルティエリアまでボールを運ばれてしまっている以上、厳しく当たらなければシュートを許してしまいます。広範囲の状況が分からないのではっきりとしたことは言えませんが、角度も厳しい位置でしたし、中では吉田選手が余っていたので、無理をする場面ではなかったかもしれません。

 ただ、直前のシーンを見直すと、原因は山根選手個人の判断だけでなく、その前段階からありそうです。相手にボールを持ち出された際に、対応にあたった山根選手への味方のフォローが足りていません。中にいた堂安律選手が少し浮いた形になっており、もし、相手が中に入るコースをハッキリと切れていたら、山根選手の対応も違っていたかもしれません。さらにさかのぼって、その前のサイドからパスを出した選手へのアプローチも足りておらず、危険な場所で時間を与えてしまっていました。
 
 守備は状況をくみ取りながら、その都度判断が変わるもの。一発で防ぐのではなく、前線からのプレスなどの積み重ねでもあります。

 対戦相手のレベルが上がれば、こちらの思いどおりにプレスでハメるのは難しくなります。ワールドカップで対戦するドイツやスペインなど格上の相手に対して、前線からのプレスを剥がされた際に、いかに相手の意図したプレーをさせないか、いかにプレーの選択肢を削って行けるかが大切です。

 ある程度、相手のプレーを限定できれば、なるべく相手にとって良い形にさせず、ゴールに素早く向かわせないで手数をかけさせる。そうすることで、相手のミスも生まれますし、守備が対応できる時間も作れます。

 本大会では球際で粘り、我慢しなければならない場面が増えると思います。ここまでやらないといけないという志向ではなく、ここまでやり続けようと思えるのか。覚悟を持って腹を括ってプレーすることが重要ですね。

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