【日本代表ボランチの系譜】柱谷哲二から遠藤保仁まで。変移する“ハンドル”の理想形は「遠藤+今野」の資質を持つ人材?

2015年10月23日 加部 究

「ボランチ」 の輸入以前には柱谷が守備的MFとして活躍。

日本代表の中盤を彩った様々なタイプのボランチたち。求められる役割も時代とともに変わってきた。(C) Getty Images

 日本代表のなかで、いまだレギュラーが定まっていないポジションのひとつが「ボランチ」だろう。10月のシリア戦、イラン戦では山口蛍、柴崎岳のふたりが長谷部誠とともに起用されたが、両者とも絶対的な地位を確立するまでには至っていない。
 
 ボランチに求められる役割は、時代の流れとともに変わってきたが、日本代表の中盤を彩った様々なタイプを引き合いに出しながら、現代サッカーで必要とされるボランチ像についてスポーツライターの加部究氏が論じる。

【写真】日本代表ボランチの系譜~オフトJAPANからハリルJAPANまで
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 ボランチという言葉の使用頻度が急速に高まったのは、Jリーグ開幕前後だったと記憶している。ハンドルを意味するポルトガル語だが、選手だけではなく指導者も含めてブラジルからの輸入が俄然活発化し、人気を牽引するのがV川崎(現・東京V) 、鹿島、清水などブラジル色の濃いクラブだったことも影響したに違いない。
 
 当初は必ず 「守備的MF」という注釈が付いたが、20世紀末にはひとり歩きするようになり、やがて外来の専門用語としては群を抜く浸透ぶりを見せた。
 
 しかし用語そのものの浸透ぶりとは裏腹に、理想のボランチを発掘するのは難しい状況にある。ハンドルの意味合いを中盤の底での舵取り役と解釈すれば、確かにパスを散らし攻撃の起点となれるタイプは目に付く。
 
 だが一方で国際基準に照らすと、ボランチには守備での鎮火作業が不可欠だ。攻撃的なスタイルを標榜するなら、洩れなく求められるのがボール奪取力で、ここで相手の攻撃を堰き止められなければ高いポゼッションも成り立たない。
 
 つまり、現代のボランチには「繊細さと強靭さ」 「テクニックとパワー」と相反する要素が求められるわけで、だからこそ高性能なハンドル製造への道は険しい。
 
 ところでボランチという言葉の輸入以前に、まず守備的MFに焦点を引き寄せたのが柱谷哲二だった。国士舘大を卒業し日産自動車(横浜の前身)に入社するが、当時のチームは攻撃的なタレントが目白押し。そこで加茂周監督に勧められ、守備力を磨いて新境地を切り拓いた。
 
 木村和司、金田喜稔、水沼貴史らを揃え、圧倒的な攻撃力を示したチームのなかで、逆に最終ラインの前の防波堤として機能し、この役割の選手としては初めて年間最優秀選手に選ばれている。

次ページボランチとして最も国際基準に肉薄したのは稲本潤一。

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