ブラジル代表はなぜD・アウベスを招集したのか。批判を浴びた選出を母国記者が「チッチ監督は天才」と賞賛した理由【現地発】

2022年11月17日 リカルド・セティオン

指揮官は「オーガナイザーとして招集した」

39歳のD・アウベスの招集は物議を醸した。(C)Getty Images

 ブラジルは近年、優秀な選手が後から後から出てくるという嬉しい状態にあり、ハイレベルのチームが少なくとも3つは作れると言われていた。カタール・ワールドカップのメンバーを最終的に26人に絞るのはチッチ監督とって骨が折れる作業だっただろう。

 ブラジルはサッカーで国が止まる。代表発表当日もそうだった。新聞は、社会問題はそっちのけでほとんどのこの話題に紙面を割き、TVは通常の番組を全て取りやめ、少なくとも30以上のTVがチッチの会見の中継をした。つい先日の大統領選挙よりも、盛り上がったかもしれない。

 予想していた通り、今回のセレソンはベテランと東京オリンピック以降にブレイクした22歳以下で編成したチームとなった。

 誰もが納得いくチーム作りとは不可能だ。当然、ブラジルではこのメンバーに多くの者が反発をした。「なんでフィルミーノがいない!」「なぜダニエウ・アウベスがいる!」と。

 SNS上では「誰が入るべきだったか」という投票が始まり、真夜中であるにもかかわらず300万人が投票した。その結果は、1位グスタボ・スカルパ、2位ガブリエウ・バルボサ、3位レナト・アウグスト、4位ロベルト・フィルミーノ、5位マテウス・クーニャだった。
 

 反対に「入るべきでなかった選手」では、D・アウベスがダントツ。現在39歳の右SBは、メキシコのUNALでプレーしている。膝を怪我しているなどの噂もあったが、これは間違いだったようで(チームが誤報と正式に謝罪した)、メキシコリーグが終わった後はスペインに渡りバルセロナBで練習をし、発表を待っていた。

 この大ベテランの選出に対し、チッチ監督はこう説明した。

「彼は攻め上げるだけでなく、中盤も助けられる選手だ。テクニックも経験も世界有数だ。60メートルをかけ上がる選手としてではなく、オーガナイザーとして招集した」

 D・アウベスはこれが2010年、2014年に続き3度目のW杯だ(2018年は怪我で出場できなかった)。世界での戦い方を熟知している。チッチは彼をチームの精神的なリーダーとしたかったのだろう。

 ブラジルではロッカールームには"アニマ(魂)"が必要だと言う。ブラジル人というのは良くも悪くも感情に流されやすい、いい気分だと調子がとことん上がるが、ケチがつくとそれに引きずられてどん底に落ちる。だからドイツに7点も取られてしまうのだ。

 皆のやる気を出させ、また多くの経験のない若手を引っ張っていく存在には彼はうってつけだ。彼は金メダルを獲得した東京オリンピックでも、オーバーエイジとしてメンバーに入っている。

【画像】フィルミーノが選外でも超豪華!ブラジル代表のW杯メンバー26人をチェック

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