赤い悪魔を牽引する若きドリブラー、マルシアルの凄さとは――フィジカル的側面から徹底解剖!

2015年10月23日 澤山大輔

スムーズな内旋・外旋の動きが可能にする巧みなドリブル。

元フランス代表FWで、アーセナルのレジェンドでもあるティエリ・アンリにも例えられるマルシアル。最大の武器でもあるドリブルに隠された秘密に迫る。 (C) Getty Images

 この夏にモナコからマンチェスター・ユナイテッドにティーンエージャーに支払われた金額としては史上最高額となる5000万ユーロ(約70億円)という破格の金額で移籍したアントニー・マルシアル。
 
 鳴り物入りで移籍した弱冠19歳のフランス人FWは、いきなり5試合で3ゴールを叩き出し、9月のプレミアリーグ月間最優秀選手にも選ばれた。
 
 10月25日のマンチェスター・シティとのマンチェスター・ダービーでも勝敗の鍵を握る、この若武者は何が優れているのか? その秘密をフィジカル面から紐解いてみた。
 
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 フィジカリズムの川端翔太です。今回は、マンチェスター・ユナイテッドのアントニー・マルシアルについて、フィジカル面からの分析を行なわせていただきます。
 
■ドリルのように動く股関節
 まず印象深いのは、1対1で仕掛けるドリブルが持ち味の選手ということです。その技巧的なドリブルを可能にしているのは、股関節と体幹部を分離して使える柔らかさではないかと思います。
 
 右足でドリブルをする際は、股関節を内旋(内側に回す動き)させて左へ、外旋(外側に回す動き)させて右へボールタッチします。しかし、体幹部分は相手に対して正対している状態を保っているので、相手DFからすればどちらに仕掛けてくるか非常に読みづらいのです。
 
 まるでドリルのように、スピードに乗ったなかでも体幹部を相手と正対させながら、股関節はスムーズに内旋・外旋を行ない、左右どちらに抜くかを素早く見極めています。そのクオリティーの高さこそが、鋭いドリブルの最大のベースとなっています。
 
 とくに、ドリブルで運んでから右足アウトサイドで軽く右にボールを押し出してからシュートを放つプレーが得意なように見受けられます。このケースでも、事前には左にも抜くことができるように、右足股関節を内旋させ、引っ掛けるようにボールを持ってから一気に股関節を外旋させているのです。
 
 また、腰のあたりを見ると、ユニホームのシワがとても多く入っていることがわかります。これは、上体と脚の向きが強烈にねじれているからこそで、この股関節のひねり、自由度の高さが、相手の対応を非常に困難にさせているのです。
 
 単純に「股関節がよく開く」「柔らかい」ということではなく、動的柔軟性(関節の動かしやすさ)があり、マルシアルはこの動作を非常に速い動きのなかで行なえるのです。

次ページピンボールのようなボディーコントロール。

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