【日本代表 26の肖像|権田修一】「ビルドアップに関わる意味はない」と本気で思っていた守護神の進化。清水サポのプライドを取り戻すべく大舞台に臨む

2022年11月17日 前島芳雄

今は近くも遠くも俯瞰的に見えるように

2大会ぶりのW杯に臨む権田。磨いてきたビルドアップにも注目だ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 いよいよ開幕が迫るカタール・ワールドカップ。森保一監督が率いる日本代表は、いかなる戦いを見せるか。ベスト8以上を目ざすサムライブルー、26の肖像。今回はGK権田修一(清水エスパルス)だ。

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「僕は恥ずかしくも何ともなく言いますけど、世界一のキーパーになりたいとずっと思っています」

 権田修一が清水に加入した昨年、彼にインタビューした際に聞いた言葉だ。

 その一方で「外国人の中に入ったら、パワーもスピードも、反応も技術も高いわけじゃない。その中で自分が上り詰めようと思ったら、足りないことだらけだと思います」とも言う。

 自分の足りないところは客観的に認めながらも、だからといって自分に限界を設定することはない。足もとや周囲の状況は冷静に把握しつつ、目線は常に前に、上に向けながら、自分の能力を1つずつ着実に高めていく。

 それが33歳となった今もGKとして日々成長を続けている原動力となっている。

 もちろん今年になっても、その姿勢が変わることはない。そのなかで今季、特に進化が見えたのは、ビルドアップに関与する部分だ。

 元々、彼自身は「鳥栖にいた頃まではキーパーがビルドアップに関わる意味はないと本気で思っていたんですよ。リスクも大きくなるので」という考えだった。
 
 だが日本代表で森保一監督にビルドアップへの関与を求められるようになり、ポルトガルでは長短のキック技術を磨くことに力を注ぎ、清水に来た昨年はロティーナ監督の右腕であるイバン・パランココーチから組み立ての理論的な側面も学んでいった。

 そして今季は、ゼ・リカルド監督が就任してからビルドアップへの参加をより強く求められるようになり、これまでの積み重ねを開花させている。

 ロングボールに頼ることなく、確実につなげる選手にボールを渡しつつ、攻撃のスイッチとなる縦パスも供給する。また相手が前掛かりになってきたら、それによって空いたスペースにミドルやロングのピンポイントパスを届ける。

「最初はパスが来たら怖くて視野が一気に狭くなっていました」と言う権田だが、今は近いところも遠いところも俯瞰的に見えるようになってきている。

 試合の状況によっては、後ろからつないでいくことを重視すべき時間帯もあるし、長いボールを増やしても良い時間帯もある。そのあたりの状況判断も含めて、権田のビルドアップ面での進化は、森保ジャパンにとって大きなプラスとなるはずだ。

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