同年代が年金生活を送るなか、“執念と節制”で年齢に抗うC・ロナウド。屈辱を経験した彼に、なぜもっと寛大な心を持てないのか

2022年11月04日 エル・パイス紙

ここまで目くじら立てて非難する必要があるだろうか

試合終了前の早退で非難を浴びたC・ロナウド。(C)Getty Images

 スペインではフットボール、とりわけレアル・マドリーに関わるものはどんな些細なことでもニュースになる。90分間の試合中はもちろん、ピッチ外で起こるあらゆる出来事が大げさに報じられる。

 だから、マドリディスタの間ではマンチェスター・ユナイテッド所属の選手というよりも、チャンピオンズリーグで大活躍を見せた元マドリーの選手としてのイメージが強くなっているクリスティアーノ・ロナウドの試合中の早退が、スペインでこれほど話題になったのは驚きだった。

 屈辱感に苛まれた彼は自身の弱みを見せてしまったことは事実だ。しかし、C・ロナウドは人一倍の執念を燃やしながら、トレーニングと節制を重ね、輝かしいキャリアを築いてきた。つまりC・ロナウドを突き動かしてきたのがその強烈な野心だ。その彼がキャリアの晩年に出てしまった造反行為(しかも試合の趨勢が決まっていた中での出来事だ)に対してそこまで目くじら立てて非難する必要があるだろうか。
 
 C・ロナウドは、デビュー以来、多くの人々を幸せにしてきた。その彼が別れを前にして幸せになることができずにいる。幸せを失うことに慣れることができないからだ。私はそれが悪いことであるとは思えない。

 考えてもみてほしい。C・ロナウドは37歳という年齢で、これまでの成功に飽き足らず、プレミアリーグに挑んでいる。その最中で挫折を経験してしまった彼に対し、周囲の人間はもっと寛大な心を持って接するべきではないだろうか。

 いま、C・ロナウドは個人としてもチームとしても多くのタイトルを獲得した後、自らのステータスを見直すことを余儀なくされている。多くの同世代の選手たちがアラブ諸国、日本、アメリカなどで高給や名声を手にしながら、"年金生活"を満喫するなか、C・ロナウドはプレミアリーグで戦い、ワールドカップに照準を合わせている。

 後半ずっとウォーミングアップをさせられて、結局出番を与えられなかったことに対して、何も感じないようではC・ロナウドではなくなる。もちろん彼がやったことは、お手本となるべき選手がすることではない。そのことは謝罪文の中で自身が言及している。

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