「トミが素晴らしいのは…」アーセナルファン歴50年超のグーナーが冨安健洋を「最高の選手」と称える理由【英国人記者コラム】

2022年11月16日 スティーブ・マッケンジー

「万全なら右サイドバックはトミのものだ」

「ゼン(禅)の心にも通じるようなマインドがチーム全体を落ち着かせている」と、グーナー歴50年超のサポータも冨安を称賛。
(C)Getty Images

 ケマル・セリムは僕の友人で、アーセナルのサポーターだ。久しぶりに彼と会って話がしたくなったのは、もちろん、アーセナルが好調だからだ。開幕ダッシュに成功し、マンチェスター・シティを抑えて首位に立っている。
 
 ケマルと落ち合ったのは、彼が贔屓にしている地元クロイドンのパブ『オーバル・タバーン』。ケマルはギネスのパイント、僕はいつものラガーのパイントでまずは乾杯した。
 
 ケマルの地元クロイドンはロンドンの南の外れで、アーセナルで言うとエミール・スミス・ロウが生まれ育った町だ。ケマルがアーセナルのファンになったきっかけは、スミス・ロウと同郷だからではまったくなくて(ケマルは50代後半だ)、父親の影響でもなくて、本人曰く「本当にたまたま」。7歳の頃、小学校で応援するチームを決めることになって、赤と白のカラーパターンが気に入ったからアーセナルを選んだそうだ。ただ、それからどっぷりのめり込み、ファン歴50年超という筋金入りのグーナー(アーセナルのファン)になっている。
 
「50年も経つか(笑)。アーセナルは特別なクラブさ。ずっと強かったし、実際にトロフィーもたくさん獲得している。それから、自前でしっかり選手を育てているのがいい。外からタレントを買っても、生え抜きを大事にする。それがクラブのアイデンティティーで、偉大なカルチャーだ。知ってるかい? アーセナルは2部に一度も落ちたことがないイングランドで唯一のクラブだ。1913年の降格は前身のウーリッジ・アーセナルだったからね(笑)」
 グーナーになって50年、アーセナルのすべてを見てきたケマルの一番のお気に入りの選手は、「ティエリ・アンリだ」。
 
「最高のゴールマシンで、あの49戦無敗(03年5月~04年10月)の立役者だ。僅差の2位がセスク・ファブレガスだな。いまの選手ならマーティン・ウーデゴーが好きだね」
 
 ウーデゴーと言えば、今シーズンからキャプテンを務めている。
 
「キャプテンにしたのは大正解。いつだってやる気に満ち溢れ、チームメイトの信頼も厚いからね。期待に応えてチームの模範になっているし、このまま突き抜けた存在になってほしいね。選手としての課題はゴールの少なさ。あのポジションだからもっと決めないと」
 
 冨安健洋もケマルのお気に入りだ。怪我の多さを指摘しながら、期待を寄せる。
 
「トミ(冨安)が万全なら右サイドバックはトミのものだ。ベン・ホワイトはセンターで使ったほうがいいし、本人もそれを望んでいる。トミが素晴らしいのは、あの落ち着きだ。ゼン(禅)の心にも通じるようなマインドがチーム全体を落ち着かせている。ハードワークを厭わないし、最高の選手だよ」

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