世界最高峰のプレミアで輝く“スーパー・トミヤス”。ポリバレント性にアーセナルOBが賛辞「器用でクレバー。偉大な選手だ」【現地発】

2022年10月20日 田嶋コウスケ

思わず舌を巻いたのがリバプール戦のパフォーマンス

サラー(右)を封じ込む、圧巻のパフォーマンスを見せた冨安。 (C)Getty Images

 アーセナルの日本代表DF冨安健洋の凄みを感じる3試合だった。3つの異なる役割とポジションを完璧にこなし、能力の高さを改めて目の当たりにしたからだ。

 現地10月9日のリバプール戦(国内リーグ)では左SBとしてサプライズの先発出場。今季リーグ戦で初のスタメン入りを果たすと、対峙したエジプト代表FWモハメド・サラーを封殺して3−2の勝利に貢献した。

 中3日で行なわれたボデ/グリムト戦(ヨーロッパリーグ)では、今度は右SBで70分からピッチに立った。守備固め要員として約20分間プレーし、1−0の完封勝利につなげた。

 そして3日後のリーズ戦(国内リーグ)では、左SBに戻って先発。ポゼッション時にボランチの位置に移動する「偽SB」の役割をこなして1−0の勝利に導いた。

 サラー対策として左SBに入ったリバプール戦、守備固めでタスクを完遂したボデ/グリムト戦、そして偽SBとしてビルドアップでも貢献したリーズ戦──。冨安は、目まぐるしく役割とポジションを変えながら、3試合ともきっちりと仕事をこなした。
 
 シーズン序盤こそ怪我の影響で出遅れたが、10月に入ってコンディションとパフォーマンスも上向いてきた。さらにポリバレントな能力も存分に発揮し、好調アーセナルの大きな力になっていると言えるだろう。

 なかでも、思わず舌を巻いたのがリバプール戦のパフォーマンスだった。

 ミケル・アルテタ監督は、左SBを本職とするスコットランド代表DFキーラン・ティアニーをベンチに置き、代わりに対人守備に強い冨安を先発メンバーに選んだ。日本代表にとってこの試合の最大のタスクは、サラーを抑えること。試合後にスペイン人指揮官が「我々の要求にトミは忠実に応えた。

 サラーを封じることを頭の中で考えるのと、実際にやってのけるのはまったく別の話」と絶賛していたように、冨安はサラーに決定的な仕事をさせず、69分にエジプトの英雄を交代に追いやった。

 特に優れていたのは、冨安の状況判断の良さ、そして守備の強さだった。

 両軍ともディフェンスラインを高い位置に設定し、フィールドプレーヤーのプレーエリアは極めてコンパクトに保たれていた。「攻」と「守」が目まぐるしく入れ替わるなか、冨安の状況判断は抜群に良かった。

 相手ボールになると冨安は、タッチライン際でパスを待つサラーのポジションを確認しつつ、ハイラインを敷く自軍の最終ラインの位置取りにも注意を払っていた。首を素早く左右に振りながら、大外のサラーと自軍のディフェンスラインを交互に確認し、周囲の状況を把握していたのである。

 もちろん、フィールドではハイスピードでプレーが展開。ボールが忙しく動き回っているなか、冨安はボールを奪いに行くのか、あるいはステイしてスペースを空けないようにするかの状況判断を的確にこなした。

【動画】今季初スタメンの冨安がサラーと白熱のマッチアップ!(投稿の上部をクリック)
 

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