クラシコに挑むバルセロナの戦術をスペイン人記者が徹底解析! 指揮官シャビが重視するのはトライアングルではなく“スクウェア”【現地発】

2022年10月16日 アルベルト・モレン

左右が非対称になるようにSBを配置している

シャビ(左)によって左SBのレギュラー格に昇格したバルデ(右)はキーマンのひとりだ。(C)Getty Images

 ヨハン・クライフが、ボールの循環にスピードとリズムを与えるために、ピッチ上に数多くのトライアングルを形成することに執着していたとすれば、シャビが重視しているのはピッチ上に描かれるスクウェアを探すことだ。そのスクウェアは全部で3つあり、最初の2つは、相手のCB、SB、センターMF、サイドMFがその構造を形成する。

 シャビがバルサの攻撃に組み込もうとしているオートマチズムの大部分は、この左右両サイドの2つのスクウェアの征服に占められている。狙うのは前述の相手の4選手の中間にあるスペースだ。

 理由は主に2つある。1つ目は単純にそのスクウェア内でボールを持てば、一気にチャンスが広がるからだ。相手CBに対してアタックを仕掛けることも、ボックス内に侵入してフィニッシュを狙うこともできる。2つ目は、相手チームが取る動きに応じて、次の展開に繋げることができるからだ。
 
 例えば、スクウェア内でボールを持った選手が自由に動き回れないように、相手のセンターMFがポジションを下げたとする。時間とスペースを確保したセルヒオ・ブスケッツとその周りの選手が、相手陣に押し込めば、より厚みのある攻撃を仕掛けることができるし、同様の理由でボールロスト時の即時奪回の準備を整えられる。あるいは相手のサイドMFがスクウェアをケアしに来たとする。その場合は、その手薄になったところをSBが突いていけばいい。

 話は少しそれるが、SBの活用法も今シーズンのシャビ・バルサのサッカーを表わす特徴の一つだ。ジュル・クンデとマルコス・アロンソの加入、アレハンドロ・バルデの台頭で選手層が厚みを増したポジションの一つだが、シャビは左右が非対称になるようにSBを配置している。つまり左SBは、相手右SB対して、ウイングと合わせて2対1を作れるよう第2のウイングのように振る舞い、右SBは攻撃参加を自重し、バランサー的な役割を担っている。

 さらに右SBは後方からのビルドアップや中盤におけるパスワークに関与しながら、相手のウイングをマークし、前方のウイングのウスマンヌ・デンベレやラフィーニャが1対1の勝負をしやすい状況を作っている。シャビがロナルド・アラウホとクンデという本職がCBで、守備力の高い選手を優先的にこのポジションで起用しているのは、そうした狙いが背景にある。

 しかし周知の通り、2人は代表戦で負傷。セルジ・ロベルトと逆足となるアレハンドロ・バルデが代役を務めているが、当然できることは異なり、攻守において綻びが生まれる結果となっている。

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